2022/令和4年
124日 (

コラム 【地域のよさを伝える1】改めて「シティプロモーション」の意味を考える 2021/09/30 12:00

関東学院大学法学部准教授・社会情報大学院大学特任教授 牧瀬稔氏

関東学院大学法学部准教授・社会情報大学院大学特任教授 牧瀬稔

 本コラムのコーナーは「地域を伝える」「住民を動かす」「官民を繋げる」「職員を育てる」といった考え方を基本に、若手公務員に情報を提供するのが目的だと聞いています。本連載は、このうち「地域を伝える」考え方について取り上げます。一概に、地域を伝えると言っても、多様な観点があります。そこで当面は「シティプロモーション」に限定して言及していきます。

 簡単に私(牧瀬)の自己紹介をします。民間シンクタンク、地方自治体、国の外郭団体を勤務して、現在は大学に勤務しています。社会情報大学院大学では、まさに「シティ・プロモーション」という科目を担当しています(同大学院大学は「シティ」と「プロモーション」にナカポツが入っています)。同大学院は社会人を対象とした専門職大学院です。

 私は25年間ほど、地方自治体の「地域づくり」を専門にしてきました。地域づくりの一手段として、近年はシティプロモーションに取り組むことが多くなっています(ただし、近年のシティプロモーションは「闇」と言えます)。

 私の実体験から、あるいは大学人という学術的観点から、シティプロモーションを考察していきます(ちなみに「シティセールス」という表記もあります。基本的に同じ要素が強いため、本連載では「シティプロモーション」に統一します)。

◇シティプロモーションとは何か

 Yahoo! JAPANのポータルサイトで「シティプロモーション」と検索してみます。その結果、サイト数は「約16,000,000件」と表示されます。実に多くのシティプロモーションに関するサイトが存在しています。その意味で、皆さんが勤務する地方自治体でも、きっとシティプロモーションを推進していると思います。

 今日、地方自治体では、シティプロモーションが標準装備となっています。しかし、私は「名ばかりシティプロモーション」が多いような気がしています(真剣にシティプロモーション業務に取り組んでいる職員には申し訳ないですが、あえて「名ばかり」と称しています)。名ばかりとは「実体が伴わないで、名前だけ。また、かたちばかり。形式だけ」という意味があります。

 皆さんが勤務する地方自治体のシティプロモーションが掲げている政策目標が達成できていない場合は、名ばかりの可能性があります。注意してください(そもそも政策目標が曖昧なシティプロモーションも多く存在しています。これも名ばかりになる一要因です)。

 質問になります。シティプロモーションの定義は何でしょうか。しっかりと言えることができますか。参考までに、図表(添付のPDF)はシティプロモーションの定義です。実にいろいろとあることが理解できます。シティプロモーションは多義的と言えます。

 図表の定義は、おおよそ理解できると思います。しかしながら、明確にしない状態でのシティプロモーションを推進している地方自治体が多くあります。

 あるいは、A市のようなシティプロモーションもあります。その定義は「『プロモーション=販売促進』という意味から、市のもつ魅力や特色、文化などについて再確認、発見、収集、磨き上げを行い、地域への愛着とブランド力の向上を図り、市内及び市外への発信をより効果的なものとするための活動のこと」となっています。

 これには大きな問題があります。手段(アウトプット)しか明記がなく、政策目標(アウトカム)の記述がありません。シティプロモーションにより、定住人口を増やしたいのか、関係人口なのか、あるいは交流人口なのか…が分かりません。実はA市のような定義を採用するシティプロモーションが多くあります。これでは目に見える成果は導出されません。

◇シティプロモーションは営業活動

 私はシティプロモーションを営業活動と捉えています。そこで「地域の売り込み」と考えています。地方自治体が対象とする公共分野に「営業」という言葉はなじまないかもしれません。しかし、住民らにシティプロモーションを理解してもらうためには「営業」と言った方が伝わりやすい傾向があります(「伝える」ことではなく、「伝わるように伝える」ことが大事です)。

 シティプロモーションは地方自治体だけで実現できるものではありません。多様な関係者の協力・連携があってこそ、成功の軌道に乗ります。その意味で、相手に伝わることを念頭に、分かりやすい言葉を使う必要があると考えています(分かりやすい定義が求められます)。ちなみに図表にある各自治体の定義は、比較的分かりやすいものです。一方で、既存の定義の多くは、正直、何を言っているのかわからないケースもあります(本連載で紹介します)。

 話は変わりますが、現在、多くの地方自治体はSDGsを推進しています。皆さんは住民らにSDGsをどのように説明していますか。「Sustainable Development Goals」や「持続可能な開発目標」と話しても理解されません。

 そこで私は「す(S)ごい、で(D)かい、ゴ(Gs)ール」と話しています。続いて住民らには「SDGsの一つの目標は2030年に全世界から貧困をゼロにすることです。貧困をゼロにすることはとても大きな目標です。だから、『すごい・でかい・ゴール』なのです」と説明すると、比較的、理解してくれます。

 シティプロモーションに限りませんが、個人的には、行政用語をいかに住民らに分かりやすく説明できるかが重要と考えています。(了)

◇牧瀬稔(まきせ・みのる)氏のプロフィル
法政大学大学院人間社会研究科博士課程修了。博士(人間福祉)。民間企業や神奈川県横須賀市都市政策研究所、財団法人日本都市センター研究室、財団法人地域開発研究所研究部などでの勤務を経て17年から関東学院大学法学部准教授。19年から社会情報大学院大学特任教授。公的活動としては、東京都新宿区や岩手県北上市、埼玉県春日部市、愛媛県西条市など多くの自治体でアドバイザーをしている。

【地域のよさを伝える】

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