コラム 【地方議員の視点1】若手職員と仲良くなる 2021/11/11 00:00

甲府市議会議員 神山玄太
「また、資料請求か…」「いつも議会では批判ばかりなのに、地域要望の話のときだけ笑顔で来ないでよ」…
議員とどう付き合っていったらいいか分からない、そう戸惑っている行政職員の方もいらっしゃるのではないでしょうか。言うまでもなく、議員は皆さんの上司ではありません。地方自治法も別組織として規定しており、指示命令系統にはありません。議会では厳しい顔をしているくせに、お願い事があるときばかり執務室に来て、上司とだけ話をして去っていく。そうしたら上司から議員に頼まれた指示が来る。そんな経験ありませんか。
申し遅れました。このたび、連載を書くことになった甲府市議会議員の神山玄太です。2011年4月に甲府市議に28歳で初当選。15年に甲府市長選挙に挑戦するも次点で惜敗。直後の市議選で市議に返り咲き、現在3期目です。
冒頭の戸惑いですが、実は私も初当選直後、逆に「職員の方々とどのように付き合っていけばいいんだろう」と思うことがありました。
◇ひよっ子にプレッシャー
甲府市議の最年少当選記録を更新して初当選しましたが、行政経験もなく、いきなり議会の場に参画しました。初当選したばかりのひよっ子も当選回数2桁のベテランも法律上は区別されず、同じ「議員」として扱われます。初当選だからといって議会日程は待ってくれません。4月に当選したばかりなのに、すぐに臨時会があり、その後、あっという間に6月定例会がやってきます。
当選後に開かれる臨時会は、議長や副議長の選挙や常任委員会の所属決め、議会内人事のために開かれます。しかし、地方自治法は特別な場合を除いて地方公共団体の長にしか議会を招集する権限を与えておらず、市長が議会を開くためには、議会に提案する議案が必要となります。つまり、議員になって1カ月もしないうちに「議決する」という大きな仕事をしなくてはならないのです。
議員になったばかりで、議案の読み方も手探りです。議会運営も初経験なのに、いきなり議決しなければならないなんて、ものすごくドキドキしました。市民に選んでいただいたのだから、どんな事に対しても真剣に向き合いたいと思っていたので、初めての議会に超絶プレッシャーを感じました。「分からないことは聞くしかない!」と、議会事務局や議案の担当部署に行き、いろいろ教えてもらいながら臨時会を乗り切りました。
続く6月定例会では、本会議で初めての一般質問もやらせてもらうことになり、議案調査だけでなく、質問作りもしなくてはなりませんでした。私は無所属議員だったので、付きっきりで手取り足取り教えてくれる先輩議員もいません。しかし「分からないことは、聞く!」の精神で、職員の方々と意見交換しながら、何とか初めての市政一般質問もクリアしました。
◇お客さん扱いに違和感
ただ、初めての臨時会や定例会を経験する中で、ちょっとした違和感を持ちました。
私が初当選した28歳という年齢は、行政職員であれば、まだ人事異動を1~2回経験したくらいで、職務の級も始まったばかりの主事クラスです。一方で、私が担当課に話を聞きに行くと、議員というだけで管理職しか対応してくれません。自分の親くらいの年齢の管理職から、丁寧な言葉遣いで、まるでお客さん扱いされるばかりでした。
「これが当たり前になってしまったら、感覚が駄目になる」と、当時は強く思いました。「どうにかしなくちゃ。議員だからといって気を使う職員ではなくて、人として付き合ってくれて、遠慮なく話をしてくれる若い行政職員の仲間が欲しい」と強く思いました。
この時期でも唯一、若い職員が相手になってくれる部署がありました。それは選挙管理委員会事務局です。なぜここだけ若い職員が出てきてくれるのだろうと思いましたが、考えるまでもなく、すぐに答えは分かりました。選管事務局にとってみれば、私たち議員が直接の仕事の対象だからです。私は選挙後の収支報告で選管事務局に出向いていましたが、議員が来たからといってわざわざ管理職が接してくることはなく、あくまでも仕事として若い職員が応対してくれました。
このチャンスを逃してはいけないと思い、選挙の収支報告が終わる頃に「今度、飲みに行きませんか?」と誘ってみました。まるで女性への口説き文句ですが、相手は男性職員です。この申し出も、最初は社交辞令と思われたようですが、他の若い職員も誘ってもらい、居酒屋で割り勘でひとまず一席設けることができました。これを契機に若手職員と交流し、人間関係を構いています。管理職と違って私をチヤホヤしても意味がないので、ありがたいことに、同年代の若手職員との交流は私に「勘違い」させない大切な場となっています。
初当選してすぐに感じた違和感ですが、私はこのようにそれを解消しました。もし議員に対してあまりいい印象を持っていないのであれば、一度、職員の方々から思い切って誘ってみてはどうでしょうか。モヤモヤした思いがなくなって、もっと仕事がしやすい関係になるかもしれませんよ。(了)
- ◇神山玄太(かみやま・げんた)氏のプロフィル
- 1982年甲府市生まれ。金沢大学法学部を卒業し、早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。日本インターネット新聞社で記者として勤務後、甲府に戻る。2010年、国会議員政策担当秘書資格試験に合格。11年に甲府市議に初当選。12年に早稲田大学パブリックサービス研究所招聘研究員に就任。第6回マニフェスト大賞でグッド・マニフェスト優秀賞を受ける。15年の甲府市長選挙では次点で落選。甲府市議に2期目の当選後、17年9月から1年間「関東若手市議会議員の会」会長。19年4月から3期目の甲府市議。山梨英和大学で非常勤講師を務めた経験も。