2022/令和4年
105日 (

インタビュー 【トップインタビュー】バイオマスで林業再生=小口利幸・長野県塩尻市長 2021/11/05 08:30

小口利幸・長野県塩尻市長

 全国有数の「森林県」である長野の中部に位置する塩尻市。伝統工芸品「木曽漆器」を生みだす豊富な森林資源を活用する木質バイオマス発電が同市で本格稼働に入った。セイコーエプソン出身で5期目の小口利幸市長(おぐち・としゆき=70)は、「再生可能エネルギーへの協力責任に加え、地域雇用が永続的に担保できる」と強調。担い手難の森林・林業を再生する一助になればと期待する。

 木が成長時に吸収する二酸化炭素(CO2)と燃焼時に排出するCO2は同量。木質バイオマスは大気中のCO2濃度に影響を与えないカーボン・ニュートラルなエネルギーとみなされている。 

 昨年10月、民間でつくる事業会社が市の遊休地でバイオマス発電所の営業運転を始めた。間伐材などを燃料として有効活用する。発電出力は1万4500キロワットで、木質バイオマス発電所としては県内最大規模だ。このほど1年間の「試運転」を終え、本格稼働に入った。 

 東京電力福島第1原発事故後、市は大学誘致失敗で宙に浮いた市有地に再生可能エネルギー施設の建設を検討。運営が楽な太陽光発電も選択肢に上ったが、「30年後には産業廃棄物。その対処がなされていない」ことを危惧した。 

 太陽光は設置後の人手はほぼ不要。一方、バイオマスは間接雇用も含めると450人分の仕事を生む。森林県を「林業県」にしたい阿部守一知事の理念とも合致し、バイオマスに決めた。

 2012年9月に県や民間と計画を立ち上げてから営業運転までの8年間は「厳しい道」だった。最初に提案した大手商社は撤退。投資額は100億円に膨らみ、出資者集めは難航した。 

 今後の課題は、燃料となる木材の安定調達だ。未利用木材を燃やすバイオマスの固定価格買い取り制度(FIT)は1kWh32円。太陽光などと比べて高く、「間伐材が順調に供給されれば、100億円は6~7年でペイできる」とみる。 

 だが担い手の不足で「木は余っているが、切る人がいない」。小口市長の目には、国や県、民間の動きは鈍く映る。国の再生可能エネルギーの強化計画や「ウッドショック」はバイオマスの追い風に見えるが、「国が真剣にやるとは思えない。危機感だけで終わる」と辛口だ。 

 初当選から19年。民間感覚の市政を訴えてきたが「職員の意識改革はまだ50%」。それでも「1割くらいかな、自ら企画して市が稼ぐ形をつくれる職員が出始めた」と、手ごたえも感じている。 

 〔横顔〕趣味は海外旅行とアユ釣り。座右の銘は「人に交わるは信を持ってすべし」。妻、次男の3人暮らし。 

 〔市の自慢〕ワインと漆器、レタス。「メルロー」など優良なブドウの産地で、17のワイナリーがある。江戸時代の宿場町の面影を残す「奈良井宿」は、富裕層に人気。

(了)

(2021年11月5日iJAMP配信)

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