2022/令和4年
105日 (

インタビュー 【トップインタビュー】100年後も穏やかな暮らし守る=坂本浩・愛媛県松野町長 2021/11/18 08:30

坂本浩・愛媛県松野町長

 高知との県境、四万十川の源流部に位置し滑床渓谷などの観光資源に恵まれた愛媛県松野町。人口3700人余の県内一「こんまい町」で2期目のかじを取る坂本浩町長(さかもと・ひろし=58)は、自らのまちづくりの目標を「50年後、100年後も町内10集落で穏やかな暮らしが続いていくこと」に据える。

 コロナ禍で都市と地方の関係が見直される中、いかに移住希望者を呼び込み、移住者のパワーを地域の活性化につなげ、住民に幸せを実感してもらうか。「小さな町の大きな挑戦」が続いている。

 忘れられない言葉がある。平成の大合併で県内70市町村が20市町に集約された際、町は単独で残る道を選んだ。当時の知事は「松野町はあえて困難な道を選びましたね」。このとき坂本氏は町職員だったが、覚悟を固め「小さな町だからこそできる町づくりがあるはずだ」と前を向いた。「今のままなら過疎の集落は限界集落になり消滅する」との危機感が、住民の「穏やかな暮らし」を守る原動力となった。

 まちづくりの一翼を担う地域おこし協力隊。滑床観光の目玉となった一枚岩の滝を滑り降りる「キャニオニング」を始めたのも彼らだった。

 耕作放棄地を開墾して桃の苗木を植え、高級和菓子メーカーに出荷する農家、美しい茶畑を残そうと始めた紅茶の栽培、農林公社で研修を受けたキュウリやトマトの施設園芸。協力隊として活動し、定住した若者たちの就労先だ。

 安定した収入を確保するため今年度、総務省の特定地域づくり事業を活用して事業協同組合を設置する。雇用した隊員を夏はキャニオニングガイド、秋はユズの収穫、冬の間はさまざまな製造業で働く「マルチワーカー」として派遣する試みも始まった。

 住宅や子育て支援、医療の充実など若者を呼び込む環境整備にも力を入れる。住宅は、町が9割補助して空き家を改修し、移住者に格安で貸し出す。また、第2子まで10万円、第3子50万円、第5子以上は100万円の出産祝い金を贈呈。保育園の給食費は免除、小中学校では半額補助するほか、教室の冷暖房完備、インフルエンザワクチンの無料接種など「県下で一番の子育て支援ができている」と胸を張る。

 移住者の活力を地域の活性化につなげる工夫も凝らす。柱となるのが地域循環型経済の確立だ。町の温泉施設の燃料を町民が切り出したまきで賄うために発行を始めた地域通貨「まき券」は、町有林の整備にも一役買っている。集落ごとに住民自らが用途を決める地域づくり交付金制度を町単独事業として進めるなど、100年後を見据えたまちづくりが続く。

 〔横顔〕実家は母親の代まで90年続いた広見川の天然ウナギを提供する老舗のうなぎ店。座右の銘は「至誠天に通ず」「シンプル・イズ・ベスト」。

 〔町の自慢〕「森の国」をうたう美しい自然と人の穏やかさ。俳人・芝不器男(ふきお)の作品などを展示した「芝不器男記念館」や中世山城の「河後森城跡」など個性的な文化と歴史。

(了)

(2021年11月18日iJAMP配信)

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