2022/令和4年
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インタビュー 【トップインタビュー】「山守」の経験、まちづくりに=中井章太・奈良県吉野町長 2021/11/24 08:30

中井章太・奈良県吉野町長

 古くから木材の集積地として発展し、「吉野杉」の産地としても知られる奈良県吉野町。2020年2月に就任した中井章太町長(なかい・あきもと=53)は、吉野地方に世襲制で残り、所有者に代わって山林を維持・管理する専門家「山守」でもある。「山守として学んだことは、長いスパンで物事を見ること」と語り、次世代を見据えたまちづくりに力を注ぐ。

 町の面積の8割以上を山林が占め、多くの町民が製材業や製箸業などの木材関連産業に従事する。中井町長は山守として一族の7代目。町長業務の傍ら、育林や伐採などを行う「中神木材」の代表を今も務める。

 一方、町内産業を取り巻く環境は厳しい。木材価格は1980年をピークに長期的にみて下落。コロナ禍での外食控えによる割り箸の需要減で、製箸業者も打撃を受けた。

 「木のまち」をどうやって次世代に継承するか―。中井町長が重視するのが、「(町を訪れた人に)山や木材、それに関わる人をセットで見てもらう」ことだ。

 試みの一つが「吉野杉の家」。建築家の長谷川豪氏と民泊仲介大手エアビーアンドビーが企画提案し、町が2016年に建設したコミュニティースペース併設の宿泊施設だ。

 「吉野杉の家」では地元住民ら有志で宿泊客をもてなす。チェックイン対応や施設の案内以外に、宿泊者を酒屋や和紙の工房などに案内して町民と直接交流するケースも。18年度の宿泊者は347人で、うち外国人は4割超の149人。「吉野材の魅力発信拠点」にとどまらず、地域内観光やビジネスの起点として期待する。

 桜の名所として知られる「吉野山」があるが、桜の時期以外の来訪者数は伸び悩む。そこで、コロナ禍で売り上げが落ち込んだ宿泊業者の支援に加え、通年での集客を図ろうと、ワーケーション事業にも乗り出した。

 ワーケーション目的で訪れ、滞在中の様子や町の魅力をSNSで発信した人に交通費や宿泊費を補助。すると、首都圏に住む人から想定以上の申し込みがあった。自然豊かな町の風景に魅了されて再び足を運ぶ人もいるといい、「利用者と地域の企業がマッチングして共に商品開発するなどして、新しいビジネスが生まれるよう、環境づくりをしっかりしたい」と意気込む。

 移住・定住促進に向け、空き家活用にも力を入れる。ただ、多くの空き家がある一方、すぐに提供できる状態のものが少ない。さらなる物件の掘り起こしや整備を進め、「特に子育て世帯に来てもらえる環境をつくりたい」と構想を描いている。

 〔横顔〕朝早く起床し、管理する山林を歩くのが日課。「せせらぎの音を聞いたり、風景を眺めたりしながら、一日をスタートできる」。

 〔町の自慢〕「不老長寿の場所とも言われた。そうした土地の持つ力がある」。歴史上の人物が多く訪れたとされ、万葉集でも「吉野」は詠まれている。

(了)

(2021年11月24日iJAMP配信)

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