2022/令和4年
108日 (

インタビュー 【トップインタビュー】「体験」できるコンパクトシティ=今井竜五・長野県岡谷市長 2021/11/29 08:30

今井竜五・長野県岡谷市長

 諏訪湖の北西に位置する長野県岡谷市は、狭い可住エリアに都市機能が集中する「自然のコンパクトシティ」だ。4期目の今井竜五市長(いまい・りゅうご=69)は「岡谷を体験し、気に入ってもらう」ためのまちづくりに力を入れる。 

 2020年12月末時点の同市人口は4万7620人。前年比590人減で、このうち転入から転出を引いた社会動態は277人のマイナスだ。 製造業が集積する同市に「働く場は十分ある」が、進学や就職を迎える18歳での転出が多い。このため高校3年生への情報発信を始め、希望者には交流サイト(SNS)を通じて就職説明会の案内などが届く仕組みを作った。いったん岡谷を離れても「情報を発信することで岡谷に気持ちを向けてもらう」のが狙いだ。 

 観光による交流人口増にも注力する。同市は生糸の生産で栄え、日本の近代化に貢献した。岡谷蚕糸博物館はその歴史や文化を伝えるだけでなく、館内に製糸工場を併設。実際に繰糸機が稼働している様子を見学できる。

 11月上旬には100%シルクのストールを自分の手で織る催しを開き、予想を上回る申し込みがあった。 

 地域と多様に関わる関係人口の拡大も重要だ。新型コロナウイルスの感染拡大で新しい働き方が普及。同市は八ケ岳や諏訪湖といった自然に恵まれた環境を生かし、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせたワーケーションへの対応を急ぐ。今夏、東京の企業の社員に短期滞在してもらい、ワーケーションを体験してもらった。「問題点や課題を洗い出し、来てもらえるまちにしたい」という。 

 移住体験事業では、今年は5人が転入した。数字的には少ないが「積み重ねが大事」と語る。 

 同市のもう一つの重要課題は「災害に強い安心・安全なまちづくり」だ。今年8月、豪雨で土石流が発生し、3人の尊い命が失われた。地形的にいつどこで土石流災害が発生してもおかしくないと言われる。市は専門家に依頼して、当時の災害対応を検証中だ。地域ごとにリスクや状況は異なり、「早めの避難指示をどう出すか」は悩ましい。国や県には、判断材料にできるような専門情報の提供体制充実を求めている。

 〔横顔〕座右の銘は「思うところ道あり」。コロナ下で畑仕事が気分転換になり、スイーツ感覚のサツマイモ「シルクスイート」を収穫した。 

 〔市の自慢〕「童画」の世界を確立した故武井武雄氏は同市出身。同氏の作品を展示するイルフ童画館、歴史ファンに人気の岡谷美術考古館、和洋折衷の旧林家住宅、絹織り体験ができる岡谷絹工房といった見どころを電動自転車で回れるコンパクトさが売り。「うなぎのまち」でもある。

(了)

(2021年11月29日iJAMP配信)

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