コラム 【公務員の段取り力4】事業の明るい進め方 2021/12/21 13:00

静岡県藤枝市人財育成センター長 山梨秀樹
◇ すべてを視覚的にイメージ
これまで述べた内容を念頭に置きながら、あなたが企画する施策・事業の成果の全体像を、できるだけ具体的にイメージしましょう。その上で、事業を実施する際に押さえるべきポイントを、簡単に書き出していくことが大切です。
例えば、新規にイベント事業をする場合を考えてみましょう。イベントの趣旨や目的、社会的な効果を見極めた上で、できるだけ多くの人を集め、にぎわいを起こしたいのが担当者の本音です。そこで押さえるべきポイントは、おおむね次のようになるでしょう。

少なくともこれらについて、やるべき行動を整理します。類似のイベントの先例も、もちろん役に立ちますが、一番大切なのは、担当者であるあなた自身が明瞭にイベントのイメージを持ち、成功に向けて脳内シミュレーションができるようになることです。開催当日の会場の様子を、静止画像、さらには動画として、自分の頭に具体的に描いてみるのです。イベントの次第と進行、成果をストーリーとして視覚的に思い描く。いわば疑似体験として、脳内で意図的に画像や動画にしてみることです。
これは経験を積めばある程度できるようになりますが、今は経験が乏しくても、関係者と盛んに会話を続けることで、だんだんとできるようになります。先輩や上司の経験談を聞き、時折、他の課のイベントをのぞいて担当者や請負業者と会話し、想像を膨らませます。自分が担当する実施会場を何回も見て、イメージを固めていきます。すると少しずつ、何が必要で、何から始めるべきかという行動の整理がついてきます。そこで、開催日(ゴール)に向けた仕事の段取りをまとめ、準備を進めていくのです。
◇コミュニケーションが最大の武器
成功イメージがおおよそ持てたら、共有に向けて、同僚や関係者と丁寧にコミュニケーションをしましょう。事業の段取りで大切なのは、常時、関係職員と外部関係者にしつこいほど連絡を取ることです。そして、日々の進捗(しんちょく)状況や懸念される事項について、常に全員が情報を共有するように努めることです。

ここで、特に注意が必要なことがあります。それは次のような、あなた自身の思い込みです。
こうした、自分が勝手に決め込む「はずだ」が一番、危険なのです。「はずだ」には、そもそも根拠が欠けており、大きなミスの元になります。思いつくことすべてについて、その都度、あなたが中心となってスタッフや関係者と逐一連絡を取り合い、小まめに確認することが大事です。参画する者全員が常に事業に携わっているという意識と、事業成功への思いを共有すること。これは仕事を進める上の基本であり、情報の共有こそが仕事成功のカギだと言えます。
それでも連絡などの失念や、お互いの勘違いによる情報共有不足は必ず起こります。私もそれを随分、経験してきました。しかし日頃から丁寧に、逐一連絡し合うよう心掛けることで、「聞いていない」「知らなかった」は最小限に抑えられます。あなたの言葉の多くは空に消え、相手の頭にほとんど残りません。だからくどいと思われても、連絡は常にしつこく、密にします。それでも読まれなかったり忘れられたりしますが、腹を立てずに連絡や確認を続けます。私は時折、直接会ったりもします。文字や写真、動画のやり取りだけでは、相手の感情やニュアンス、何より自分の熱意がうまく伝わらないと思うからです。
こうした綿密な連絡と情報の共有で、参画者全員に強い連帯感が生まれてきます。間断のない小まめな行動で関係者に意気込みが伝わり、共鳴させ、やがて共振させていくのです。誰かに「お任せ」するのでなく、あなたの行動とリードの下、事業を全員で進行管理し、モチベーションを分かち合うことで、事業を成功に導く。それで参画者全員が、大きな達成感と満足感を得ることになります。これが仕事の「連帯の段取り」です。(了)
- ◇山梨秀樹(やまなし・ひでき)氏のプロフィル
- 1983年静岡県庁に入り、旧総理府(現内閣府)地方分権推進委員会事務局、静岡県総務部合併支援室、藤枝市行財政改革担当理事、同市副市長、静岡県理事(地方分権・大都市制度担当)などを経て、19年4月から藤枝市理事。同年6月に人財育成センター長に就任した。同県内を中心に、公務員の「言葉力」をテーマにした研修・講演の講師を務めている。