2022/令和4年
105日 (

インタビュー 【トップインタビュー】「藩」のような自立都市に=白鳥孝・長野県伊那市長 2021/12/10 08:30

白鳥孝・長野県伊那市長

 中央、南アルプスに抱かれた長野県伊那市。3期目の白鳥孝市長(しろとり・たかし=66)は、食料やエネルギーを海外に依存する日本の現状に危機感を募らせる。「自立できる地方都市、江戸時代の『藩』のような地域づくり」を目指す。

 地方創生が言われて久しい。「国は人が地方に行き、金を付ければできるという感じだが、大きな間違いは『自活できる社会づくり』ができていないことだ」と語る。

 エネルギー自立に向け、市が注力するのが森林資源の活用だ。市の面積は県内自治体で3番目に広い667平方キロ。うち森林が82%を占める。「化石燃料に頼らず、自分たちの周りにあるものを使う生活スタイル」への転換を訴え、森林資源を循環させる「伊那市50年の森林(もり)ビジョン」を策定している。

 再生可能エネルギーの導入目標も設定済み。再エネによる二酸化炭素(CO2)排出抑制効果は2015年度末時点で一般家庭からの総排出量の14%に当たるが、25年度末までに53%へと高める計画だ。

 具体的には、大気中のCO2濃度に影響を与えないカーボン・ニュートラルなエネルギーとされる木質バイオマスを強化する。家庭・公共施設屋上での太陽光発電も推進するが、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の設置には「反対」。「CO2を吸収して酸素を出す森を切って、それに変えるのは本末転倒」と話す。

 同市は移住先としても注目され、20年度の民間調査では人気移住地域2位。自然や特色ある教育、企業誘致による雇用増が魅力といい、毎年100人以上が移住する。

 住みやすさは、地域ぐるみで取り組んだ成果でもある。ある地区では、少子化で保育園が休園に追い込まれた。住民が立ち上がり、知り合いに呼び掛けたり、空き家に入ってもらったりして、5人だった園児が40人まで増え、閉園は回避された。「地元が本気になればできる」成功例として、視察や取材が相次いだ。市は地区を「田舎暮らしモデル地域」に指定し、支援している。

 若者の定住に向け、6年前から中学生を対象にした職業紹介イベント「中学生キャリアフェス」も毎年実施している。「(大学などを)卒業したら帰ってきてもらう」のが狙いだ。

 任期は来年4月までで、4期目に意欲を示す。「福祉政策の総点検」が公約の柱になりそうだ。

 〔横顔〕趣味のたき火は「土砂降りでもできる」達人。常に「なぜ」というマインドで、物事を探る。両親と妻の4人暮らし。長男が近居予定。

 〔市の自慢〕「あり過ぎて分からない」が、「無限の可能性を秘めた森林」が一番。

(了)

(2021年12月10日iJAMP配信)

同一カテゴリー記事