2022/令和4年
108日 (

インタビュー 【トップインタビュー】声を上げられるまちへ=宮下智博・長野県松川町長 2021/12/14 08:30

宮下智博・長野県松川町長

 長野県南部の松川町は、リンゴなど果樹栽培が盛んな農業の町だ。県内最年少首長として2019年4月に就任した宮下智博町長(みやした・ともひろ=41)は、有力者とぶつかることも辞さない対話重視の町政を貫いてきた。「『声の大きな人たち』の矢面に立ち続け、サイレント・マジョリティー(沈黙する大衆)が声を上げ始めた。町は変わると信じている」と語る。

 少子高齢化が進み、世代交代が遅れている地方は少なくない。松川町もその一つ。町の有力団体幹部はいずれも60~70代の長老で「20代のころから40~50年間引っ張ってきている」。「声の大きな」彼らとの対話では「若さは強みではなく、弱みとして働く」のが現実。根回しをしないまま町長選出馬を表明したときは、強硬に反対されたという。

 今でも「長老の力は強い」が、町長就任後も逃げずに対話を続けてきた。そうするうちに、沈黙してきた若者たちが「おかしいんじゃないか」と声を上げ始めたという。「黙っていた20~30代、40代の間で、声を上げなければならないという意識改革ができてきた」と手応えを感じている。

 一般住民の意識も変える必要がある。「よそ者を受け入れる覚悟や準備があまり整っていない」ため、移住者に「何でこんなところに(来たのか)」と聞いてしまう住民もいるという。過疎化への危機感を持ってもらい、理解を求めていく考えだ。

 子育てしやすい町として発信にも努めている。その一つが、学校給食の充実だ。有機農業で育てた素材を使い、給食センターではなく、各保育所・学校で調理している。給食費を無料にする自治体も増えてきたが、質の低下も懸念される。「朝食が満足に食べられなかったとしても、給食だけは温かくておいしくて栄養があるものを出したい」。食事療法で難病を克服した自身の体験もあり、食のPRに熱が入る。

 同じ南信州の飯田市に新駅ができるリニア新幹線の開業は、首都圏が近くなる「ビジネスチャンス」だ。一方で工事に伴う発生土を運ぶダンプは松川町を通過する。通学路の安全対策と同時に、「発生土を町内で利活用できず、通られるだけなのか」という住民の不満にどう対応するかが課題だ。

 〔横顔〕幼少期に難病にかかり、20歳まで生きられないと医者に宣告された経験を持つ。農家出身で、職歴はホテルマン、レストラン勤務、非常勤高校講師と多彩。趣味は料理。大学時代は混声合唱団の団長を務めた。父、妻、小学生の子2人の5人暮らし。

 〔町の自慢〕果樹栽培開始から100年を超える「くだものの里」。松川産シードルはふるさと納税の返礼品でも人気。

(了)

(2021年12月14日iJAMP配信)

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