2023/令和5年
924日 (

コラム 【地方議員の視点3】行政区域を超えたつながり 2022/02/11 00:00

甲府市議会議員 神山玄太氏

甲府市議会議員 神山玄太

 2022年1月11日の山梨県富士川町長選挙で、県議会議員だった望月利樹氏が無投票当選しました。望月氏は「未来の山梨を拓く議員の会」で共に活動してきた仲間です。本会から県内の首長になったのは、望月氏で3人目です。

◇若手議員が情報交換

 「未来の山梨を拓く議員の会」は、県内の若手地方議員によって構成され、情報交換や意見交換を通じて相互に見識を高め、未来の山梨を構築していくことを目的とした、自治体の行政区域を超えた団体です。私たちは「来山会(らいざんかい)」と呼んでいます。

 来山会は11年10月に組織され、現在、首長2人、県議会議員7人、市議20人、町議2、村議2人名、元職3人の計36人で構成する超党派の団体です。党派性はなく、「未来の山梨のために」行動すべく参集しました。

 本連載の最初の回でも書きましたが、議員は当選したらすぐに議員としての仕事が始まります。当然ですが初当選だからといって研修期間のようなものはなく、議会になれば自分で判断し、議員活動を進めていかなくてはなりません。まず頼りにできるのは同じ議会の先輩議員ですが、議会は違っていても同じ壁にぶつかっている初当選議員同士の情報交換も、とても参考になります。

 地方議会はそれぞれの議会で独自の予算や条例を議決します。しかし、国から地方への財政支出が決まったときの予算措置や法律改正を受け、条例改正が生じるような場合、どの自治体でも似通った議案を審査することがあります。請願なども同じ内容のものが複数の議会に提出されることもあります。もちろん議決での賛否は、それぞれの議会で個々の議員自らの判断ですが、議会での議論の参考にするため、仲間のいる他の議会でどのような議論があったのか、どのように判断したのかなど、来山会の仲間たちとの情報交換がとても役に立っています。

◇政治を身近に

 来山会は「未来の山梨を構築していく」ことを目的として掲げています。そのため、メンバー同士の意見交換だけでなく、住民の皆さんに選挙や政治を身近に感じてもらう活動をすることも重要な活動だと考えています。

 18歳で投票権を持つことを、多くの皆さんが意識しており、主権者教育なども「投票者としてどう判断するか」について学ぶことに主眼が置かれていると思います。でも私たちは25歳という年齢も大きな節目であると考え、25歳になったことを祝う「第二成人式」というイベントを開いてきました。

 なぜ来山会が25歳になったことを祝う企画をしようと思ったのか。それは25歳が被選挙権を得る年齢だからです。25歳になって、「よし!被選挙権を持ったぞ!」と強く意識している人はほとんどいのではないでしょうか。

 「第二成人式」は、25歳で被選挙権が手に入ることの自覚を高めるためのイベントです。「成人=選挙権」のイメージは強いですが、「被選挙権」となると、ほとんどその権利の行使を意識することがないように見受けられます。「政治を身近にするのももちろん大事だが、政治家になることを身近にしたい」という思いから、政治に挑戦できる「25歳という節目」をきちんと意識することが重要であると考え、第二成人式を企画しました。

第1回「第二成人式」=2013年1月13日、甲府市

 13年1月13日の第1回の第二成人式は、開催地だった甲府市の成人式と同日、同会場としました。25歳の第二成人に第二成人証書を授与し、「市長×地方議員×第二成人」によるパネルディスカッションに入りました。当時の甲府市長も、若くして政治家になった人だったのでゲストに呼びました。

 その他にも、国政にネットでの選挙運動が解禁された13年の第23回参議院議員通常選挙で「ネットで主張 2013参院選やまなし~動画を見て選挙に行こう~」という政策動画配信を企画しました。

 ネット選挙解禁前は、候補者がどんなに頑張って演説をしても、その場にいる有権者にしかメッセージを伝えることができませんでした。しかしインターネットが選挙運動のツールとして使えるようになれば、有権者は自分が見たい時間に、見たい場所で候補者の主張を聞き、比べることができるようになります。

 来山会は、山梨でも新たな選挙運動の在り方を提示しようと、候補者の政策動画と選挙運動動画をインターネットで配信する企画を立てました。「ネットで主張 ~動画を見て選挙に行こう~」は、その後の衆院選や知事選などでも実施しています。

 来山会の活動を始めて10年が経過しました。私たちの活動で山梨の政治文化に変化があったかは分かりませんが、議員1人では不可能でも、行政区域を超えた地方議員のつながりだからこそ、かなえられたことがたくさんあります。仲間の活動から多くの刺激、ヒントをもらっています。そして私たちの活動で、住民の皆さんが少しでも政治や選挙が身近になっていてくれれば嬉しいです。(了)

◇神山玄太(かみやま・げんた)氏のプロフィル
1982年甲府市生まれ。金沢大学法学部を卒業し、早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。日本インターネット新聞社で記者として勤務後、甲府に戻る。2010年、国会議員政策担当秘書資格試験に合格。11年に甲府市議に初当選。12年に早稲田大学パブリックサービス研究所招聘研究員に就任。第6回マニフェスト大賞でグッド・マニフェスト優秀賞を受ける。15年の甲府市長選挙では次点で落選。甲府市議に2期目の当選後、17年9月から1年間「関東若手市議会議員の会」会長。19年4月から3期目の甲府市議。山梨英和大学で非常勤講師を務めた経験も。「ワイン県」山梨で活動する議員として21年にワインエキスパート資格も取得。

【地方議員の視点】

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