2022/令和4年
105日 (

インタビュー 【トップインタビュー】ICT教育で移住不安解消=市瀬直史・長野県喬木村長 2022/03/01 08:30

市瀬直史・長野県喬木村長

 南アルプスのふもと、河岸段丘が美しい長野県喬木村。人口減少が加速する中、国の「GIGAスクール構想」に先駆けて児童・生徒1人1台にタブレットPCを配備した。無投票で3期目に入った市瀬直史村長(いちのせ・なおし=63)は、情報通信技術(ICT)教育について「移住で一番心配するのは教育環境と話す親は多い。『東京の子どもと変わらない教育を提供できる』と言えるのは大きい」と語る。

 2015年から文部科学省の実証実験に参加して、インターネットを通じた遠隔授業を実施。ふるさと納税で1人1台のタブレットPCを整備し、国のGIGAスクール予算で端末を更新した。新型コロナウイルス禍で休校した際も、「(オンラインで)同じ授業環境を構築できた」という。

 ICT教育の効果では、特に「発表する力」を挙げる。画面上のホワイトボードにクラス全員が意見を書き込め、授業で発言しない子を含め多様な考えを知ることができる。「1人でノートに向かうより、いろんな情報を集めて発表する能力が身についてきた」。18年に文科相、20年に総務相から表彰された。「井の中のカワズにならず、グローバル社会で物おじしない子に育ってほしい」と期待する。

 乗り越えねばならない課題は多かった。まずは担い手となる教員への指導。「現場の先生に一から教えねばならず、3年くらいかかる」のに、育ったころに異動してしまう。このため教育とICT両方に詳しい専門職員を採用して、支援体制を整えた。また端末の運用では、先生主導から児童・生徒の自主性を尊重するルールに変えた。

 5年後には数百台の端末が更新期を迎える。「国に支援してもらえるのか、それとも親が用意するのか。そろそろ国に先の展望を出してもらいたい」と訴える。

 一方、村議会議員のなり手不足という問題もある。かつて夜間・休日議会で全国的な注目を集めた喬木村だが、昨年の村議選で初めて定数割れとなり、今年の再選挙でも解消できなかった。地域のために汗をかく人が少なくなり、自身の無投票再選も「あまり喜ばしい事態ではない」。

 04年に近隣市・村との合併を住民投票で否決し、自立を選んだ喬木村。「少ない人数で大きな村をどう守るか」という重い課題を前に、村づくりに関心を持つ人材を一人でも多く育てることが欠かせない。

 〔横顔〕好きな言葉は、吉田松陰の「夢なき者に成功なし」。木を削って作る模型や家庭菜園が趣味。妻と二人暮らし。

〔村の自慢〕遠く美ヶ原高原まで見渡せる雄大な渓谷の景観。高台に統合・新設する保育園には展望台を置く。和傘「阿島傘」は江戸時代から続く伝統工芸品。

(了)

(2022年3月1日iJAMP配信)

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