2022/令和4年
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インタビュー 【トップインタビュー】「豊かに縮む」価値観、市民と共有=中屋謙治・鹿児島県いちき串木野市長 2022/03/15 08:30

中屋謙治・鹿児島県いちき串木野市長

 東シナ海に面した豊富な水産資源から「つけ揚げ(さつま揚げ)」発祥の地として知られる鹿児島県いちき串木野市。2021年11月に初当選した中屋謙治市長(なかや・けんじ=66)は、少子高齢化と過疎化の波に「『豊かに縮む』という価値観を全市民と共有し、地の利も生かしながらまちづくりの質を高めていく」と意欲を示す。

 公立校統廃合や再生可能エネルギー産業の拠点化など賛否が割れる課題について、多様な市民で構成する「2040年のまちを考える会(仮称)」で議論する考え。「20年先に飛んでこちら側を見たとき、今の施策は持続可能なのか。違う景色が見えるはずだ」と発想の転換を促す。

 05年の旧串木野市・市来町合併から人口は6000人超減って2万7000人を割り、高齢化率は4割に迫りつつある。「足りない施策を補う発想ではなく、強みを生かし思い切って未来投資の重点化を図る」ときっぱり。「下を向いていても仕方ない。前を向くために質を追究するしかない」と、焦眉の急である公立校統廃合問題を俎上(そじょう)に載せる。

 市内の8小学校のうち、校区外の児童を受け入れる特認校制度について、過疎化に伴い児童を送り出してきた3校を、23年度から1校に絞る。公立中についても市教育委員会は統廃合対象を検討する方針を示した。

 10年前から生徒数が半減した県立串木野高校について、市は入学準備から通学中、進学時の手厚い補助を続けている。「財政支援の先が見通せない。延命策に陥らないよう市民とともに20年先を見据えたい」

 再エネも市民と膝詰めで議論したい考えだ。いちき串木野市のある薩摩半島西岸沖は平均風速が7メートル以上と安定している。九州電力川内原子力発電所(薩摩川内市)と隣り合わせだが、原則40年の運転期限を25年11月に控える中、「仮に(最長)20年延長されても、洋上風力は天の恵みを生かした代替エネの主力となり得る」と強調。景観や漁業への影響など賛否が分かれるが、22年度当初予算に調査研究費4000万円を計上した。

 施策の質を求める姿勢は雇用にも向かう。市は若者の希望職種を増やそうとIT企業誘致へサテライトオフィスの整備に本腰を入れているが、コロナ禍を経て全国の自治体も力を入れている。施設園芸などのスマート化や地元有力酒造メーカーのデジタルマーケティングも含め「いちき串木野ならではの立地のメリットを突き詰める」と不退転の決意を示した。

 〔横顔〕79年に旧串木野市役所に入り、合併後に総務課長や副市長を歴任。1男2女は独立し妻(65)と暮らす。昨年8月に初孫が誕生した。趣味のゴルフは多忙のため封印。

 〔市の自慢〕10年に「食のまちづくり」を宣言。老舗が軒を連ねるつけ揚げ、焼酎のほか、マグロやちりめん、ポンカンなど豊かな一次産品を生かした6次化商品の開発が盛ん。

(了)

(2022年3月15日iJAMP配信)

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