2022/令和4年
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インタビュー 【トップインタビュー】東京にはない魅力「適疎」に価値=松岡市郎・北海道東川町長 2022/03/18 08:30

松岡市郎・北海道東川町長

 北海道の最高峰・大雪山系旭岳の麓にあり、ゆるやかな人口増が続く北海道東川町。松岡市郎町長(まつおか・いちろう=71)は「過疎でも過密でもない適当な『疎』がある空間」をまちづくりの柱に据え、「適疎」をキーワードとした東京では実現できない暮らしに価値を見いだす。住民福祉を支える安定財源の確保では「稼ぐ行政を推進して住民負担を軽減する」との方針を掲げ、町にある資源の利活用を進める。

 1972年に町役場入り。その数年後、過疎問題に関する書籍で適疎という言葉を知り、「刺激を受けた」。東京一極集中と地方の過疎化で格差が広がる中、「極端に片寄らないまちづくりが望ましい。疎があることが素晴らしい」と語る。

 「疎を生かし、東京では絶対にできないことをやろう」と考え、具現化した一つが移転した町立東川小学校。周辺の公園を含む敷地は20ヘクタール以上で、平屋建て校舎の廊下は長さ約270メートルに及ぶ。「東京の建物は縦に高いが、うちは横に長い。人間も横の関係だ」と強調。東京にはまねできないのびのびとした教育環境を打ち出す。

 こうした適疎の考えに共感する人も多く、約30年前に7000人を切った人口は約8400人に回復。ここ20年の移住者が過半数を占める。ただ、人口増は目指さず、「定住人口で8000~1万人を維持する」ことでゆとりある空間を確保し、交流人口を増やす方針だ。

 住民福祉の向上も行政の重要な役割で、「足らない社会資本は充実させる」と断言。必要な財源は「定住人口だけで賄うのは難しい」と考え、稼ぐ行政を進めるため、交流人口が鍵とみる。

 既に動きは出ている。公設では珍しい町立東川日本語学校の授業料の一部を活用し、複合交流施設の年間運営費約7000万円を生み出す。建設予定の健康福祉施設では、隈研吾氏が設計したサテライトオフィスの使用料などで運営費を賄う計画。「町内のさまざまな資源を利活用して財源に変える」手法を駆使し、1月に新設した適疎推進課を中心に汗をかく。

 町政の原点は反骨心。「だめ、できないと言われたら、やりたくなる。やらないことの中にチャンスがある」と一歩踏み出す行動を心掛ける。「記録に上限がないように、東川町は進化し、より良い方向を目指す」。町の挑戦に終わりはない。

 〔横顔〕社会教育課長、税務課長などを経て2003年に町長就任。5期目。休日も町の課題解決策を考えるほど「仕事が趣味」。直木賞や芥川賞の本は欠かさず読む。

 〔町の自慢〕豊富な地下水を生活水として利用。「写真の町」としても知られる。町内にはおしゃれなカフェがあり、家具やクラフト雑貨の職人がアトリエを構える。

(了)

(2022年3月18日iJAMP配信)

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