2022/令和4年
105日 (

インタビュー 【トップインタビュー】EV化の潮流を心配=貴舟豊・長野県大桑村長 2022/03/28 08:30

貴舟豊・長野県大桑村長

 長野県南部の木曽郡の山あいにある大桑村は、自動車産業が雇用を支える「勤労者の村」だ。4期目の貴舟豊村長(きぶね・ゆたか=73)は、脱炭素政策として世界的に進むガソリン車から電気自動車(EV)への潮流について「本当に心配している」と話す。

 村には九つの水力発電所と二つのダムがあり、戦前から製造業が基幹産業だった。村の就労人口のうち、3分の1以上が製造業。代表例は村に本社を置くIHIターボで、圧縮空気を送り込んでエンジンの出力を高めるターボチャージャー(過給器)を3工場で生産する。

 村では共働きが多く、立地企業からは「女性(従業員)に早く復帰してほしい」という要望が寄せられている。このため村は、国に先立って幼児保育無償化を実現。一定条件の下で3歳未満児も無料にした。

 「既存企業が操業しやすい環境づくりや人材確保は行政の大事な務め」と語る。少子・高齢化が進む中、生産年齢人口の維持は最重要課題だ。進学を機に村を離れる若者には「自然が豊かな大桑村の良さはよそへ出て分かる。いずれ帰ってきて村で勤めてほしい」と呼び掛ける。

 気掛かりなのは自動車のEV化だ。EVはエンジンがなく、電気モーターで動く。エンジン用の部品を生産するIHIターボなどにも影響は及ぶが、「トラックなどでは内燃機関(エンジン)の車が必要で、すぐにどうこうということはないと聞いている」という。ただ「やはり世の中の流れはある」としてEV化の流れを注視している。

 製造業の進出は村と村民に安定した収入をもたらしたが、その副作用として「観光面は木曽郡の中で遅れてしまった」。エメラルドグリーンの水面が美しい阿寺渓谷(日本遺産)に加え、村を通る国道から眺められる3色咲きの「ハナモモ」といった観光資源の活用は道半ばだ。村の面積の9割超を占める森林資源についても、現場で働く人材が不足し、基幹産業化には遠い。

 今年5月には、新庁舎が完成。木曽郡では2番目となる図書館を併設する。「本当に住みよい村に近づくには、心の豊かさが必要」として、文化の中心にと期待する。

 〔横顔〕酪農の経験があり、機械や水道の修理から溶接まで「何でもできる」。所有する山の木を自ら切り出し、自宅の建材に使ったことも。「誠実」と「笑顔」がモットー。妻と長男の3人暮らし。

 〔村の自慢〕西尾酒造のにごり酒「杣酒」(そまざけ)。どぶろく風味で、「必ず土産に持っていく」。「ますの卯の花漬け」や「五平餅」も名物。

(了)

(2022年3月28日iJAMP配信)

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