2022/令和4年
1210日 (

コラム 【地方議員の視点5】議員の行政視察って何?(国内編・下) 2022/04/20 12:00

甲府市議会議員 神山玄太氏

甲府市議会議員 神山玄太

 「議員の行政視察って何?(国内編・上)」では、行政視察の「答え合わせ」という捉え方や行政視察の進め方についてお伝えしました。私は自身のホームページで、これまでの行政視察を一覧にして公開しており、今回はその中から印象に残る行政視察を幾つかご紹介します。

◇恐縮ばかりの初視察

 現在、私は会派を組織していますが、初当選から8年間はどこにも所属せずに1人で活動していました。そのため初当選当時、行政視察がどういうものか誰にも教えてもらえない状況で、初めて行くことになりました。

 甲府市は近い将来にリニア中央新幹線山梨県駅が開業する予定です。初めての行政視察では、東北新幹線の延伸に伴う新青森駅と八戸駅周辺整備の取り組みについて調査し、リニア駅周辺整備の参考にしたいと思い、2011年8月に青森県の青森と八戸の2市を訪問しました。

 行政視察では大抵の場合、冒頭に歓迎セレモニーがありますが、その時は当然、知る由もありません。依頼していた政策課題について説明を受け、意見交換するだけのつもりでした。しかし、案内された会議室に入ったとたん、議長をはじめ、議会事務局長、説明役の職員など大勢の方がいて、とても驚きました。議長のごあいさつの後、私にも一言をとおっしゃっていただき、恐縮ばかりの中で話をしたことを覚えています。

 歓迎を受けるのはありがたいのですが、時間を取っていただくことに申し訳なさもあり、それ以後、行政視察をお願いする場合、政策課題に関する説明だけで大丈夫ですと伝えるようにしています。

◇「何を聞きたいんですか?」

 会派や委員会のように複数で行く場合、最初に担当職員の方から総括的に説明を受け、その後に意見交換となります。しかし、1人の場合はそうはならないことが多くありました。

 視察が始まると「何をお聞きになられたいんですか?」「何を知りたくてお越しになったんですか?」と説明の前に聞かれることがほとんどでした。視察者が私だけということもあり、こちらが一番聞きたいこと、知りたいことについて説明したいという先方の思いから、そのように対応するのだと想像しています。こうなると最初から意見交換に入るので、事前に十分な課題の整理と視察先の取り組みの予習を欠かさないようにしました。

 視察をお願いする場合、関連の取り組みに関する市の課題や聞きたい点をまとめた資料を事前に送っています。限られた時間で有意義なやり取りをするには必要なことだと思っています。

◇意見交換にうれしい配慮

 私は中心市街地活性化の取り組みをライフワークの一つとして議会で取り上げてきています。「甲府ー東京圏」の関係は「佐賀ー福岡圏」と類似性が見られるため、佐賀市の中心市街地活性化の取り組みを調査することはヒントになることが多いのではないか、また甲府と違って国が認定する中心市街地活性化基本計画を作らずに独自の取り組みをしている点にも興味を持ち、視察先を佐賀に決めました。

佐賀市での1対1の意見交換

 佐賀の行政視察(12年10月)のとき、説明者の職員の方が1人で来られました。名刺交換すると肩書は部長でした。通常、説明担当者は、課長や課長補佐といった対象となる取り組みに現場で直接かかわっている方がほとんどです。部長が1人でいらっしゃるのは初めてですし、それ以降もありません。

 話を伺うと、こちらが依頼したテーマに長年にわたり携わっており、誰よりも十分な意見交換ができると思ったので、時間を作ったとのことでした。そんなうれしい配慮をしていただいた経験もあります。

◇どんな人が来るの

 鹿児島県志布志市の公益財団法人「志布志市農業公社」に新規就農者の受け入れ支援体制について、17年5月に調査に行ったとき「どんな人が来るのか興味があった」と言われました。

 同公社の取り組みよって、新規就農した農家の面積が既存農家の耕作面積を上回るほどまで拡大していたり、移住者増で地域の学校に通う子どもが増え、複式学級にならずに済んでいたりと、大きな成果を出していました。

 このように大きな成果が出ていることから、同公社はとても注目されていました。視察依頼も多かったそうですが、1人で視察を申し込んできたのは私が初めてだったとのことです。複数による視察は、政策への興味・関心の違いから、議員の熱意に差を感じることがあるようでした。だから「1人で乗り込んで来るなんてどんな思いを持った人なんだろう」と興味を持ったそうです。

 視察前から注目してくれたこともあり、意見交換はとても白熱しました。甲府は県庁所在市ですが、豊かな農業地域も広がっており、就農のために移住する若者も増えてきています。同公社で吸収したヒントを議会でも取り上げました。その結果、就農支援の取り組みが広がり、新規就農者の増加傾向が続いています。

 印象に残る行政視察を紹介しました。この他にも、議会で取り上げて市の取り組みに反映できたと思うことが幾つもあります。課題になっていることを、他都市の事例をヒントに解決していく手法は重要だと感じています。(了)

神山玄太・視察/研修報告書へのリンク
→ http://blog.livedoor.jp/genta_kamiyama/archives/52390433.html

◇神山玄太(かみやま・げんた)氏のプロフィル
1982年甲府市生まれ。金沢大学法学部を卒業し、早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。日本インターネット新聞社で記者として勤務後、甲府に戻る。2010年、国会議員政策担当秘書資格試験に合格。11年に甲府市議に初当選。12年に早稲田大学パブリックサービス研究所招聘研究員に就任。第6回マニフェスト大賞でグッド・マニフェスト優秀賞を受ける。15年の甲府市長選挙では次点で落選。甲府市議に2期目の当選後、17年9月から1年間「関東若手市議会議員の会」会長。19年4月から3期目の甲府市議。山梨英和大学で非常勤講師を務めた経験も。「ワイン県」山梨で活動する議員として21年にワインエキスパート資格も取得。

【地方議員の視点】

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