2022/令和4年
105日 (

インタビュー 【トップインタビュー】「世界一健康づくりの楽しいまち」に=植田壮一郎・高知県室戸市長 2022/04/27 08:30

植田壮一郎・高知県室戸市長

 高知県東部の室戸市は、5000年前からの地殻変動の軌跡が残り、国連教育科学文化機関(ユネスコ)から「世界ジオパーク」に認定されている。大地の息吹が感じられる市の行政をつかさどる植田壮一郎市長(うえた・そういちろう=66)は、「『世界一健康づくりの楽しいまち』を宣言できる市にする」と決意を新たにしている。

 人口減少対策が市の喫緊の課題だ。植田市長は「その一番の原因は病院だ」と指摘する。市内には一般病床を備えた病院や診療所がなく、高齢者を抱える世帯は他の自治体へと流出。このため、市長就任の2018年に公約の筆頭に掲げた「命を守る」にまい進し、22年6月には19床を備えた市立の診療所を開設する。

 並行して、市は高知大医学部と医療体制充実を目的とした覚書を締結。同大は「SAWACHI(さわち)型健康社会共創拠点」構想を市などと共に科学技術振興機構(JST)に提案。同大の専門医が診療所の医師にオンラインで指導をしたり、患者の診療をしたりする。植田市長は「JSTに評価されれば超高齢化のまちであってもへき地であっても、持続可能な元気なまちに変わる」と力説する。

 併せて重視するのが、南海トラフ巨大地震による被害の軽減だ。1月のトンガ諸島付近での海底火山噴火によって、市では漁船が沈没するなどの被害が出た。市内には11基の津波避難タワーを整備しているが、平時は入り口を扉でふさいでいた。子供たちが勝手に上がると危険というのが理由だが、防災の専門家からは普段から使わないといざという時に活用できないとの声も上がる。植田市長は条例を見直し、市民の健康増進行事などに利用できるよう制度改正。「子供からお年寄りまで楽しめるようにクリスマスの時期にイルミネーションをつけては」とアイデアを膨らませる。

 市は、豊かな自然や海の幸など魅力が多く、移住者に人気が高い。地域おこし協力隊との連携を強化しながら、移住者増加策に取り組んでいく考えだ。その移住や観光の起爆剤が、線路上は列車として、道路ではマイクロバスとして走行する「デュアル・モード・ビークル(DMV)」だ。徳島、高知両県を結ぶ第三セクターの阿佐海岸鉄道が21年12月、世界初の営業運行を開始した。

 平日は高知県側へは県境の東洋町までの運行だが、土日と祝日は室戸世界ジオパークセンターなど室戸岬周辺の観光スポットをマイクロバスとして回る便が1往復する。室戸市に鉄道はないが、植田市長は「利便性がめちゃくちゃ変わる。不便な所が助かる技術だ」と過疎地でのDMVの普及に期待を寄せている。

 〔横顔〕市議、県議を経て18年12月に市長就任。日本地図に市の位置を記した名刺を持ち、室戸の場所をPRしている。趣味は、長年手掛けてきたカンランの栽培。「強き意志を持つ水となれ」が座右の銘。

 〔市の自慢〕日本で初めて海洋深層水を取水。「むろと廃校水族館」は、廃小学校の教室やプールで室戸の海の魚を飼育・展示。室戸岬灯台は現存の鉄造灯台では日本で2番目に古く、光の到達距離は日本一の49キロ。弘法大師空海が修行し悟りを開いた地でもある。

(了)

(2022年4月27日iJAMP配信)

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