2022/令和4年
108日 (

インタビュー 【トップインタビュー】「太陽光」開発圧力に対抗=名取重治・長野県富士見町長 2022/05/18 08:30

名取重治・長野県富士見町長

 東を八ケ岳、西を南アルプスに囲まれた高原の長野県富士見町には、太陽光発電施設が集中する。今年3月、住民同意のない開発を規制する「改正太陽光条例」を施行。太陽光が争点となった昨夏の選挙で再選を果たした名取重治町長(なとり・しげはる=71)は、「相当厳しい条例でなければ、開発圧力に抗しきれない」と語る。

 晴天率が高く、夏は冷涼という気候が太陽光発電に向く富士見町は、「業界では『宝の山』と呼ばれていた」。地球温暖化対策を担う再生可能エネルギー拡大という流れもあり、開発業者が押し寄せた。

 急峻(きゅうしゅん)な地形の町内には土砂災害警戒地域が多い。メガソーラー(大規模太陽光発電所)など地上設置型は木を切り倒すこともあり、業者と住民のトラブルが頻発。「予期しない大雨や台風時の土砂災害の危険性など、住民は不安を持っていた」。静岡県熱海市や長野県岡谷市で土石流被害が相次ぎ、「住民の生活環境や命まで脅かす切迫感があり、住民の不安を解消すべきだ」と判断したという。

 改正条例は、近接住民の3分の2(当初案では全員)の同意義務付けなど、「日本中を見ても指折りの厳しさ」だ。業者側は「(営業の自由や財産権を保障する)憲法に違反している」と反発したが、「同意の義務付けがなければ規制にならない。地域住民の理解を得られない開発は止めたい」との思いは揺るがず、町議会は全会一致で改正条例を可決した。

 一方で、地上設置型太陽光以外の再エネは推進する。屋根置き型に補助金を出し、小水力発電の可能性も改めて探る。

 また「担い手のいない地域が増えると町全体の活力が落ちる」として、少子・高齢化対策にも注力する。中小集落の草刈り作業などに支援金を出す「富士見型多面的農地維持事業」(単独事業)を始めたほか、今年から役場内に地域運営支援チームを設けた。

 移住定住相談室の設置や、テレワーク施設「森のオフィス」開設などが奏功し、移住・定住が増加。転入が転出を上回る転入超過に転じた。ここ2年は、自然減も含めた人口減少が年50~60人台と、「150人以内」を掲げた総合計画を大きくクリア。「明らかにブレーキがかかってきた」と感じる。

 町では、地元出身者のUターンを、「ふるさと」と「富士見」に引っ掛けて「Fターン」と呼ぶ。そのうちの1人は町長の次男。「うちの近くに家族と住む家を新築中」と顔をほころばせた。

 〔横顔〕精密メーカーに約30年勤務後に役場入りしており、「感覚は民間」。「誠心誠意」を大事にする。信州の伝統猟「蜂追い」をこよなく愛す。

 〔町の自慢〕町名の通り、富士山の絶景スポットは多い。井戸尻遺跡は、農耕は縄文時代から始まったと唱える「縄文農耕論」の発祥の地。出土品の高い芸術性に驚く。

(了)

(2022年5月18日iJAMP配信)

同一カテゴリー記事