2023/令和5年
131日 (

コラム 【地方議員の視点6】議員の行政視察って何?(海外編) 2022/06/03 10:00

甲府市議会議員 神山玄太氏

甲府市議会議員 神山玄太

 ここまで2回にわたり「議員の行政視察って何?(国内編)」でした。今回は、もちろん海外編です。

◇国内と異なるアプローチ

 「やっぱり議員は海外視察をしているんだ」と思われるかもしれません。そうです、私は海外視察をしています。

 国内の行政視察の場は「答え合わせ」という感覚だとお伝えしましたが、海外では違います。国が違えば社会の仕組みや法体系、価値観、宗教感が全く別です。政策を考える上で基盤が異なり、仮に日本と同じ行政課題を解決するための政策展開であっても、アプローチが大きく異なります。だからこそ、海外の事例を調査すれば「新しい気付き」を得られるのです。

◇スウェーデンでの「気付き」

 北欧諸国は子育て支援先進国です。私も若くして議員になったため、北欧諸国の子育て支援の取り組みにずっと関心を持っていました。事例を伝える書籍などは多々読んできましたが、現地を見て、感じたい、意見交換したいと思い、視察することにしました。

 2013年10月に、スウェーデンのソーレンチューナ市を訪問しました。首都ストックホルムから列車に揺られて30分程度の距離にあります。この時は、現地在住の日本人にコーディネートをお願いし、甲府市と環境が似ている都市を選びました。妊娠してから保育園入園までをサポートするファミリーセンターや保育園(就学前教育)をテーマに、現地視察や関係者との意見交換をしてきました。

 ファミリーセンターを視察した時、最初に目に入ってきたのは、1歳くらいの子どもと父親が2人でプログラムに参加していた姿でした。日本では幼少の子どもと一緒にいるのは母親というケースがほとんどですが、ここでは、父と子だけ、父母と子どもというように、母親だけが子連れで来ているわけではありません。これが北欧の子育て支援の現場だと印象深かったのを覚えています。

ソーレンチューナ市のファミリーセンターでの保育風景

 子どもと2人連れの父親に話を聞くと「ファミリーセンターがなくても育児の不安はないが、子どもにとっては退屈な毎日になるだろう」と言っていたのが印象的でした。子育ては「子どもにとってどうか」という部分に重きが置かれていると強く感じました。2人だけで来ていた理由は「妻は大学の研究者で、今は論文を書いているから私が育児休暇を取っている」からで、協力し合って子育てしているとのことでした。

 スウェーデンの育児休暇は、夫婦の片方しか取得しないと最大日数を確保できないそうで、夫婦それぞれで取ると休暇日数がさらにプラスされるという説明を受けました。しかも、分割して必要な時に使えるため、まさに社会で育児、子育てを支援していると実感しました。

◇育休取得の背景に雇用環境

 現地に赴いて視察する利点は、視察項目に関したさまざまな話が聞けるということです。日本だって育児休暇の仕組みはあるのに男性の取得率は低いままです。どうしてそんな違いが生じるのだろうと思っていました。視察中に話を聞く中で、その要因は、育児休暇や子育て支援の領域ではなく、雇用環境にあるのではないかと気付くことがありました。北欧には、終身雇用という概念はほとんどなく、公民問わず雇用が流動的と言います。大手企業は新卒者よりも経験者を雇いたいと考えています。ひっきりなしに中途採用の求人があり、仮に育児休暇取得によって労働力が不足しても、その企業で働きたい人がいるから企業活動に影響は出ません。企業にとっても、そこで働こうと思っている人にとっても、チャンスがあるわけです。

 日本にいて書籍の情報だけで北欧の子育て支援環境がすごいと思っていても、裏付けとなる雇用環境まで思い至ることはないかもしれません。子育て支援の仕組みが機能している背景に、雇用環境が影響しているのではないかと気付いたのは、実際に海外視察で現地に触れたからこそです。

 海外視察は、ソーレンチューナ市以外にも、米国ではワシントン州シアトル市や甲府の姉妹都市のアイオア州デモイン市、オランダのアーネム市、カンボジアの首都プノンペン、シンガポールなど、さまざまな国にいろいろなテーマで訪れました。

◇海外視察の必要性

 海外視察にも国内の視察と同じようにルールがあります。甲府市議会のルールは議会の「申し合わせ事項」で定めており、該当部分を見ると「【経過措置】海外視察については、当面(今任期中)凍結するものとする」とされています。

 「え、凍結って!」Σ(゜ω゜)!

 思わず、一人ツッコミしてしまいました。甲府市議会は申し合わせ事項で海外視察のルールを定めていますが、2003年から運用を凍結しており、公費での海外視察はできません。つまり私のこれまでの海外視察はすべて「自腹」だったのです。

 私の場合は議会のルールで凍結されているため、結果として自己負担ですが、それでも行く必要性は大いにあります。今回の例だけでなく、現地だからこそ気が付く点もありますし、現地だからこそ可能な意見交換もあります。自腹で行くのは大変ですが、いい点を挙げるとすると、視察先の都市でサッカーを見たり、ワインを飲んだりして観光しても、市民から怒られることはありません。せっかく時間をかけて海外まで行くのですから、視察だけでなく、多くの文化、歴史、コミュニティーに触れてください。得るものが、きっとたくさんあることでしょう。(了)

神山玄太・視察/研修報告書へのリンク
→ http://blog.livedoor.jp/genta_kamiyama/archives/52390433.html

◇神山玄太(かみやま・げんた)氏のプロフィル
1982年甲府市生まれ。金沢大学法学部を卒業し、早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。日本インターネット新聞社で記者として勤務後、甲府に戻る。2010年、国会議員政策担当秘書資格試験に合格。11年に甲府市議に初当選。12年に早稲田大学パブリックサービス研究所招聘研究員に就任。第6回マニフェスト大賞でグッド・マニフェスト優秀賞を受ける。15年の甲府市長選挙では次点で落選。甲府市議に2期目の当選後、17年9月から1年間「関東若手市議会議員の会」会長。19年4月から3期目の甲府市議。山梨英和大学で非常勤講師を務めた経験も。「ワイン県」山梨で活動する議員として21年にワインエキスパート資格も取得。

【地方議員の視点】

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