インタビュー 【トップインタビュー】多極分散の転換期「まずは自給自足」=遠藤忠一・福島県喜多方市長 2022/06/06 08:30

新型コロナウイルスの感染拡大で生活様式が変化する中、「中央一極集中から地方へ多極分散の転換期。受け皿になっていきたい」と意気込むのは福島県喜多方市の遠藤忠一市長(えんどう・ちゅういち=74)。市面積の約7割に当たる広大な森林や基幹産業である農業など、自然豊かな特色を生かしたまちづくりを進める。「まずやるべきは自給自足だ」と話し、多分野で地産地消に取り組む。
「ウクライナ情勢があって、皆が気がついたと思うが、日本は農耕民族。今の日本がそれで成り立っている」と強調。国内の食料自給率の低さに触れ、「田園回帰の動きが起きており、地方創生の意義を実感する」。市内すべての小学校には、農作業の実体験活動を重視した「農業科」の授業を設けているほか、給食に低農薬米や朝採れ野菜を使うなど、食育の意識は高い。
今、積極的に取り組むのがエネルギーの地産地消だ。脱炭素化が進む中、「大型の水力発電所などで作る電気は都市部に送電されることも多いがそれではだめだ。自然災害も多い時代で行政は方向性を見極めなくてはいけない」と語る。さまざまなトラブルに見舞われても大規模停電しない体制を整えたい考えで、民間と協力しながら、市内で自家発電し余剰は売却、利益は行政の充実に使うという循環が理想だという。
学校など公共施設に設置を検討する太陽光発電と合わせ、水力発電にも注目する。「基幹産業は農業で、勾配もある。水車を回しながら小水力発電ができる」と期待を込める。
地元産の建築材も積極的に取り入れる。体育館や市の子育て支援住宅などに使用し、森林の有効活用にもつなげる。今後は、公共施設か民間の施設かを問わず、地場材を使用した際の補助制度を創設したい考えだ。
「全国に1700以上自治体がある。選んでもらうにはアイデア勝負だ」とする一方で、「地域全体で広域的に課題に取り組むことも重要だ」と話す。市に隣接する北塩原村はリゾート地として宿泊施設も多いほか、周辺自治体には道の駅やキャンプ場もある。「会津はひとつ」をキーワードに地域全体で交流人口の増加を狙う。「一つの自治体だけ良くなるのではなく、会津17市町村でさまざまな課題に一緒に挑戦する」。
少子化や過疎化が進む中で「地方の疲弊は都市部の疲弊だ」と指摘。「国にはぜひ、地方の出番を作ってもらいたい」と力を込めた。
〔横顔〕福島県議などを経て、18年から現職で現在2期目。染型紙「会津型」のすかしが入った名刺で伝統文化をPRする。実家は農家で、休みの日は農作業に精を出す。
〔市の自慢〕年間約180万人が食べに訪れる「喜多方ラーメン」のほか、つゆにつけずにそのまま食べる「水そば」も隠れたグルメ。日中線しだれ桜や三ノ倉高原のヒマワリといった花見スポットが多く四季折々の自然が楽しめる。
(了)
(2022年6月6日iJAMP配信)