インタビュー 【トップインタビュー】住みやすいまちを目指して=太田洋・千葉県いすみ市長 2022/06/08 08:30

房総半島の太平洋側にある千葉県いすみ市。中心部のJR大原駅から東京駅までは約70分で、東京に通いつつ、里山里海に囲まれた暮らしが満喫できるため、移住先として人気が高い。太田洋市長(おおた・ひろし=74)は「都心に近いことや豊かな自然だけでなく、子育て支援も手厚いことで『住みたい』と選んでもらっている。今後も住みやすいまちづくりを進めたい」と話す。
市は移住者を増やすため、不特定多数の人がインターネットで業務の受発注ができる「クラウドソーシング」を活用した新しい働き方に注目。2018年秋から、一定の条件を基に、クラウドソーシングで仕事を受けた人が支払う手数料を助成している。
働く場所や時間を問わないネットを使った仕事は、若者や、子育てと仕事の両立を図る子育て世代のニーズに合う。「クラウドソーシングは東京に行かなくても仕事が見つけられ、稼げる。学校から帰る子どもを家で待ちながら仕事もできる。田舎が生き残っていくには、こういう仕事を支援することが大事だと思う」と語る。
市は子どもの医療費助成や小中学校の教材費補助など子育て支援の充実を図る。「移住したいまちになるには、子どもに優しい、子育てしやすい地域づくりが欠かせない」と強調する。
子どもに関する取り組みで、移住者の関心を引き、保護者から支持を得ているのが有機米や有機野菜を採り入れた給食だ。17年10月に全小中学校の給食を有機米に切り替えた。現在は、野菜も小松菜や長ネギ、ジャガイモなど8品目で有機農産物を使っている。
食育や環境教育を兼ね、児童は田植えや稲刈りを体験したり、地産地消を学んだりしている。「おコメができるストーリーが分かると、食に対する考え方が変わる。『おいしい』と感謝し、食べ残しも減った」と説明する。
秋には、五穀豊穣(ほうじょう)と大漁を祈る「大原はだか祭り」が行われる。江戸時代から続く伝統的な祭りだが、新型コロナウイルスの影響で20~21年は中止となった。「コロナ前と同じ方法では人を集められない。個人や家族、友人同士で楽しめる場所や時間を提供することが求められている」と指摘。「いすみは夕日や星空が格別。撮影スポットなど市の魅力をたくさん発信していきたい」と笑顔を見せた。
〔横顔〕千葉県職員を経て1999年旧岬町長に初当選。2期務めた。2005年に合併で誕生したいすみ市の初代市長に就任し、5期目。最近の趣味は「ウオーキングしながら地域を見て回ること」。
〔市の自慢〕豊かな自然。コメ、ブルーベリー、伊勢エビ、マダコなどの農水産物。市民の笑顔。
(了)
(2022年6月8日iJAMP配信)