2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】遠くなった海を取り戻す=大場規之・静岡県袋井市長 2022/06/09 08:30

大場規之・静岡県袋井市長

 静岡県西部に位置する袋井市は、東海道五十三次の27番目の袋井宿が発展した街。歌川広重の浮世絵にはのどかな風景が描かれており、東西どちらから数えても27番目に当たるため、「どまん中!」がキャッチフレーズだ。昨年4月の市長選で初当選した大場規之市長(おおば・のりゆき=59)は、2022年度予算で初めての編成作業に当たった。「力を入れたのは、産業と脱炭素、インフラ整備など。民間出身の私が市民に貢献できるのは、会社で言えば営業に当たる分野。地域の活性化にもつながると思う」と話す。

 目玉は浅羽海岸の整備。太平洋を望む美しい海岸線を核に、マリンスポーツや市民の憩いの場として整備する。既にサーファーや釣り客らの間では名所として知られるレジャースポットだが、東日本大震災以降、防潮堤が整備され震災対策が進んだ半面、「海が遠くなった」。そこで、国のナショナルサイクルルートに指定された太平洋岸自転車道や隣接する浅羽体育センターなどを一体的に整備し、にぎわいを創出する計画だ。「防潮堤の上まで車で行き、車内から海が見えるようにしたい。週末にはキッチンカーが出て、飲食ができるようなビーチにしたい。海を取り戻したいんです」と構想を語る。

 脱炭素に向けては、ごみの減量化に取り組む。焼却施設の能力が限界に近く、昨秋にごみ処理有料化を検討したが、「分別の徹底」を求める意見が多いことから転換。雑紙回収など、可燃ごみを30年度までに30%削減する「ふくろい5330(ごみさんまる)運動」を強力に推進する。一方で、市所管施設の消費電力について再生可能エネルギー由来のものへの転換も急ぐ。「世界的なトレンドとして避けては通れない。市全体でゼロカーボンを進めていきたい」と力強く語る。

 就任当初の思い出を尋ねると、「市長になった途端に、教育、産業、農業などいろんなジャンルで次から次に意思決定が求められる。そのサイクルがすごく速い。すべての分野のスペシャリストにならないといけない。苦労とは言わないが、びっくりした」と苦笑。就任2日後には新型コロナウイルスワクチンの接種予約が開始され、対応に忙殺されたといい、「市民の健康と命をどうやって守るか。新型コロナウイルスとの闘いがこの1年だった」と感慨深く振り返った。

 〔横顔〕1987年慶応大理工卒。計測機器メーカーや学習塾などで勤務したほか、静岡県議1期。カメラ好きで、名刺にも自身で撮影した浅羽海岸の写真を使う。教育に携わった経験を生かした著書に「子どもに生き抜く力を」。

 〔市の自慢〕開口一番、「やっぱりクラウンメロン。どこに行っても自慢できる」。温室栽培の高級メロンで、ふるさと納税の返礼品の8割を占める。最近は、製茶業の生き残り策として、ほうじ茶のブランド化にも力を入れる。

(了)

(2022年6月9日iJAMP配信)

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