インタビュー 【トップインタビュー】魅力アップと稼ぐまちづくりを=甲斐宗之・宮崎県高千穂町長 2022/06/13 08:30

「アフターコロナ、インバウンド(訪日外国人旅行者)回復を見据えて、種をまいてきた観光施策が花を咲かせるように頑張りたい」と意気込むのは、甲斐宗之・宮崎県高千穂町長(かい・むねゆき=51)。絶景の峡谷、神話ゆかりの神社や神楽など見どころの多い同町は県内随一の観光地でありながら、「お金が落ちていないのが課題だった」。収入に結び付く仕組みづくりや、さらなる地域の魅力アップを狙う。
「稼ぐまちづくりをしたい」として、このほど地域商社「高千穂まちづくり公社」を設立。二つの物産館の運営やふるさと納税業務のほか、独自ブランド開発や観光情報発信などを担わせる。「行政にはできない柔軟な経営で売り上げを伸ばす」と話す。
訪日客の回復に備えガイドの育成を推進。「ガイドが活躍する高単価の旅行商品も仕掛けたい」と強調する。商店街の活性化に向けては「空き店舗を活用して新しい経営者が営業するチャレンジショップの支援にも力を入れている」といい、有望な新店誕生に手応えを感じている。
新たな観光の起爆剤として進める「鉄道公園化構想」では、台風被害や解体の危機を乗り越えた「高千穂鉄橋」を活用する。既に、カートに乗り105メートルの高さから峡谷、森林、棚田の壮大な風景を楽しめる人気スポットとなっているが、さらに歩廊を設けたり体験型アトラクションを導入したりして一帯を公園化する方針。観光客が快適に回遊できるよう交通渋滞緩和に向けた「パークアンドライド」なども導入する考えで、「コロナ禍で思うようなトップセールスができなかった。誘客、発信に直接乗り出したい」と声を弾ませる。
観光以外では、新規就農支援策として、移住・定住と組み合わせた「高千穂ファーマーズスクール」をスタート。形状が複雑な農地でのスマート農業の実証実験も進行中だ。医療では、隣接する日之影、五ケ瀬両町と3町立病院の24年春の統合を目指す。3病院の病床機能を急性期、長期療養、介護などに分け、3町で必要な医師を確保し効率的に配置するなど具体的方策を練る。「ごみ処理、広域消防で3町連携の土台がある。医療も今やらないと大変なことになると思い、両町に声を掛けた」という。病院統廃合のモデルとしても注目されそうだ。
〔横顔〕高千穂町役場では、保険、畜産、企画観光、財政など幅広く担当し、総合政策室長時代には世界農業遺産、ユネスコエコパークなど目玉事業も手掛けた。2019年1月に町長に就任してからも職員時代の経験や人脈を十二分に生かす。
〔町の自慢〕「神話の里」にふさわしい、どこか懐かしさを覚える峡谷や棚田といった風景。伝承されている夜神楽は、国の重要無形民俗文化財に指定されている。
(了)
(2022年6月13日iJAMP配信)