インタビュー 【トップインタビュー】目指すは「環境の町」=山梨崇仁・神奈川県葉山町長 2022/06/22 08:30

ヨットハーバーや御用邸で知られる神奈川県葉山町。2012年1月に初当選し、3期目の折り返しを過ぎた山梨崇仁町長(やまなし・たかひと=45)は、葉山を「環境の町」として世界にアピールすることを目指している。
葉山はヨットを愛した昭和の大スター、故石原裕次郎さんゆかりの地でもある。だが近年は、裕次郎さんの名を知らない世代も現れ「葉山という名前に対し、新しい価値を付けなければならない危機感を持っていた」と明かす。
そこで目を付けたのが環境問題だった。焼却炉の老朽化などを受け、ごみを減量化しようと14年6月から家庭系ごみの戸別収集を開始。燃やすごみや容器包装プラスチックなどは自宅前のごみ箱から収集し、缶や瓶、ペットボトルなどは町内に設けた資源ステーションで回収する仕組みとした。分別は27品目に及び、「リバウンドなく25%くらいまで減量している」と話す。
戸別収集は無料で、町のクリーンセンターに勤める職員が担っている。町長就任直後は、センターの職員から「そんなことできるわけない」と否定的な発言が相次いだ。約1カ月間通い詰め、「前人未到のプロジェクト。君たちにしかできない」と説得し続けると、雰囲気が変わった。今では「町全体で最も感謝の声が届く部署になった」。
19年からは「はやまクリーンプログラム」として、町立施設でペットボトルの販売を中止した。「子供は水筒を持っているのが当たり前。甘受してきたわれわれの世代が我慢すれば困らない」と考える。22年6月からは、環境に配慮した事業者を町のホームページで紹介するなどの「エシカルアクション」も開始。「環境貢献のリーダーシップを取っていきたい」と意気込む。
町長として心がけてきたのは「町民が何を望むかを現場で感じるようにする」こと。就任直後はベンチャー勤務時代の感覚で、毎日午前0時まで役場に詰め「町長が帰らないと職員が帰れない」と直言された失敗談も。「自分が組織の一番下にいる意識」で、日々町を走り回っている。
〔横顔〕ウインドサーフィン選手からベンチャー企業勤務、葉山町議を経て町長に就任。選手時代の経験が生き、昨年の東京五輪ではホストタウンとして英国セーリングチームを受け入れた。
〔町の自慢〕近代日本ヨット発祥の地。西向きに開けた海岸は南風や北風の影響を直接受けず、「ヨットが安全に沖に出るには最高」。
(了)
(2022年6月22日iJAMP配信)