インタビュー 【トップインタビュー】コロナで弱まったコミュニティー復活を=佐藤貢・宮崎県町村会会長(日之影町長) 2022/06/30 08:30

「政策提言などを通じて、小さな自治体である町村や地域に光を当てていくのが町村会に課せられたテーマ。風通しを良くして問題点を考えていきたい」。こう語るのは宮崎県日之影町の佐藤貢町長(さとう・みつぐ=66)。2月に県町村会会長に就任し、コロナ禍で打撃を受けたコミュニティー機能の復活に意欲を示す。
過疎化、少子化、高齢化、働き手の確保など中長期的課題が多い中、「コロナ禍によって地域のコミュニティーが無くなっていくのが怖い」と危機感を募らせる。「祭りも地域行事も3年間無くなった。隣の1人暮らしの人がどうしているかも分からず、高齢者福祉、防災などへの影響は計り知れない」と話す。
このため日之影町は今年度、各集落を訪ねる意見交換会に力を入れる。「コロナが落ち着きつつある今、行政が後押しして、人と人とのつながりを復活させたい」と力を込める。
こうした状況は多くの町村に共通する悩みだ。一方で、温暖な気候など宮崎ならではの特徴も、コロナによる地方移住志向の高まりやウクライナ紛争などによる不安がある今だからこそ、大切だと強調する。そもそも温暖で暮らしやすいことに加え、食糧確保やエネルギー危機などへの不安が募る中、「農業の振興をさらに強めることができる。高騰する燃料代の影響も小さい」と指摘。恵まれた気候や風土を最大限生かしていく考えだ。
公民連携や行政の効率化も重視する。「新しい産業、イノベーションなどは、田舎の小さな町村では民間の情報量やノウハウに勝てない」と分析。「日之影町はIT企業との連携を進め、DX(デジタルトランスフォーメーション)なども積極的に考えている。各町村は民間の積極的な提案を受け、それぞれの政策や共通課題として力を借りるべきだ」と訴える。
自治体の連携強化も追求。高千穂、五ケ瀬両町と共に進める赤字の公立3病院の経営統合では、3町で必要な医師を確保したり、病床機能を役割分担したりするなど大きな効果を期待。「民間でなくとも効率化できるモデルケースにしたい」と意気込む。
〔横顔〕町職員、副町長を経て2013年から町長。現在3期目。町出資の農業法人を設立し、農作業を引き受けて農地や農家を守る仕組みを全国でもいち早く構築して注目された。県トップクラスの子育て支援、ICT(情報通信技術)教育の充実もけん引。今年度はICTを駆使した町民の交通システムなどにも力を入れる。178センチの長身ながら多くの人と目線を合わせ、大好きな焼酎片手に腹を割って話すのが持ち味。
〔県内町村の自慢〕それぞれの歴史と特徴がある。林業立村に徹したり、神話の里や平家の落人伝説が息づいていたり、歴史や文化を今日につなげてきたことは大いに誇れるという。
(了)
(2022年6月30日iJAMP配信)