2022/令和4年
105日 (

インタビュー 【トップインタビュー】周産期医療の充実目指す=坂口茂・石川県輪島市長 2022/06/30 08:30

坂口茂・石川県輪島市長

 石川県能登半島にある輪島市は、医師不足が深刻となっており、地域医療体制の確保が大きな課題だ。2021年には医師不足の中で、不適切な医療が行われ、新生児が死亡する医療事故が起きた。人口減少対策に力を入れる坂口茂市長(さかぐち・しげる=65)は「奥能登で周産期医療を充実させることが大切だ。充実させないと『ここに住んで、お子さんを産んでくれ』とは言えない」と強調する。

 現在、市や珠洲市など2市2町がある奥能登地方にいる産婦人科医はたった1人。そんな中、事故は昨年6月に発生した。市立輪島病院で出産予定だった妊婦が体調に異変を感じ、産婦人科を緊急受診し入院。容体が安定し、主治医が病院を離れた後、妊婦の体調は急激に悪化した。病院に戻った主治医が帝王切開を行わず、不適切な薬剤投与を実施したことで新生児は仮死状態で生まれ、その後死亡した。

 「あってはならないこと。申し訳ない思いでいっぱいだ」。こう強調した上で、2年ほど前から地域の産科医が輪島病院に勤務する1人だけになり、負荷が集中したことに問題があったと指摘。事故後、緊急時にいつでも相談できる医師の確保などの再発防止策に加え、医師を「輪島病院の産科に複数配置させる」ため、県に協力を要請している。国には地方の病院経営に対する支援が必要だと訴える。

 医師不足の背景には、地域全体で進行する人口減少がある。最大の課題に挙げる定住者の増加に向けて、地場産業の振興に意欲を示す。「デジタル化や国際化、脱炭素化を意識しながら取り組んでいきたい」

 能登のPRの起爆剤となる可能性を秘めるのが国の特別天然記念物トキの放鳥だ。県は輪島市などと連携し、環境省に放鳥事業の候補地として応募申請書を提出した。「下世話な言い方だが、観光にも一次産業にも効果があるのではないか」と期待を語る。

 市は22年度の「SDGs(持続可能な開発目標)未来都市」に選定された。豊かな自然と観光、伝統産業である輪島塗という「三位一体の持続可能な発展」を目指す。「下手をすると、奥能登は人間が絶滅危惧種になる」と冗談を飛ばしつつも、持続可能で活力ある市内経済の構築に意気込んでいる。

 〔横顔〕徳島大工卒。民間企業での勤務を経て、1982年輪島市役所に入り、交流政策部長や副市長を歴任した。今年3月の市長選で初当選。趣味は映画鑑賞。

 〔市の自慢〕輪島港で水揚げされた海産物に代表される美食と全国的な知名度を誇る漆器の輪島塗。

(了)

(2022年6月30日iJAMP配信)

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