インタビュー 【トップインタビュー】農業活性化で関係人口拡大=石嶺伝実・沖縄県読谷村長 2022/07/01 08:30

約4万1800人が住む日本一人口の多い村、沖縄県読谷村。今年2月、4期目に入った石嶺伝実村長(いしみね・でんじつ=66)は、村の農業の可能性に大きな期待を抱いている。農業の発展は、関係人口の増加や観光事業との相乗効果が大きいためで、「周辺自治体とは異なる村の大きな特色になる」としている。
拠点産地に認定されている「菊」「ニンジン」「紅イモ」の高品質化を中心に取り組む考えだ。村役場がある周辺一帯は、旧日本軍によって造られた「読谷補助飛行場」があった場所で、戦後は米軍が利用し、2006年に全面返還された。村は土地の切り売りや虫食いになる開発を避け、土地改良やかんがい・排水事業を進めてきた。
「カネは一代限り、土地は万代まで」。役場の先輩らは安易な開発をこう戒め、農業基盤整備に取り組んできたという。こうして守り、受け継いできたインフラは今、農業の発展という枠を超えるポテンシャルを持つようになった。「農泊」や「ワーケーション」など、観光分野への波及が見込めるようになったためだ。
村は農業・地域振興に取り組む人材や事業者を「クリエイティブファーマー」と呼ぶなど、農業を軸に多様な人材確保や担い手の育成を推進している。
村人口は増加しているが、10年後には減少に転じると推計されている。このため、「関係人口を増やす種まき」として、コロナ禍の2021年、「やちむん」と呼ばれる焼き物など、地元工芸品の越境EC(電子商取引)を支援するプロジェクトを開始。今年5月には民泊仲介大手と包括連携協定も締結した。
コロナ前から取り組んできたスポーツキャンプの誘致のほか、中断していた各種イベントも順次再開を計画。「いよいよこれから再スタート」と、4期目の村政充実を誓っている。
〔横顔〕50年前の復帰当時は地元読谷高校に通い、ラグビーに明け暮れていた。母校は昨年暮れ、初めて全国高校ラグビー大会への出場を果たした。
〔村の自慢〕毎秋に開催され、県内外から5万~10万人が集まる「読谷まつり」は今年、3年ぶりのリアル開催を予定。「(県外の人に)つまらなかったら旅費を返すと声を掛けてきたが、今まで要求されたことはない」。祭りの満足度の高さは村長のお墨付きだ。
(了)
(2022年7月1日iJAMP配信)