インタビュー 【トップインタビュー】「遊びに来る場所」から「住みたい場所」へ=小野徹・北海道礼文町長 2022/07/04 08:30

日本最北端の離島・礼文島の全域を占める北海道礼文町。300種類以上の高山植物が群生することから「花の浮島」と呼ばれ、毎年5~9月には多くの観光客が訪れる。小野徹町長(おの・とおる=71)は「この時期だけはどこにも負けない」と自信をのぞかせる一方、人口減少が進む現状に移住・定住施策にも注力。「『遊びに来る場所』から『住みたい場所』にしたい」と語る。
町内唯一の高校・礼文高校は、全国から生徒を募集する「島留学」制度を2020年度から導入した。同校は10年ごろから入学者が10人前後で推移。「島の子どもが『看護師になりたい』『部活をやりたい』と、島を出る時代になった」。再編が危ぶまれる中、海が見下ろせる立地に寮を整備。島の自然に触れるフィールドワークや、全1年生を対象にしたロサンゼルスでの2週間のホームステイなど実体験を通した教育課程が注目され、全校生徒58人のうち25人が島外からの生徒「島留学生」だ。
「島に長く住む自分たちでも、(霧が深く、近隣の)利尻や稚内が見えない日が続くと寂しい」。だからこそ、親元を離れて暮らす島留学生への支援は手厚い。帰省に掛かる往復交通費の半分(上限5万円)を年4回まで助成。子どもの成長を現地で見てもらおうと、保護者の来島交通費も補助する。来春には初めて島留学生が卒業する。「礼文で働きたいという人がいるとうれしい」とほほ笑んだ。
町の人口は約2400人。ピークだった1950年代の4分の1にまで減った。16年には移住体験住宅、17年には網外しやコンブ干しなどができる「ふるさと応援・体験道場 礼文番屋」を整備。いずれも1泊1000円から泊まることができる。22年4月には、移住定住・人材交流拠点施設「袋澗(ふくろま)」を開設。Wi―Fiが完備され、空き家や求人情報を提供する窓口もある。島の生活を知ってもらおうと、「いろんな切り口で島を体験できるようにしている」。
新型コロナウイルス感染拡大で、昨夏の観光最盛期には、来島自粛を呼び掛けるもどかしさを味わった。コロナ収束後の観光客の回復に期待を寄せ、「うちの観光はまさしく体験型。花だけでなく、海に親しめる施設も作りたい」と意気込む。
〔横顔〕1969年に町役場入り。2005年に町長初当選し、現在5期目。花が好きで、撮った写真をフェイスブックで発信している。
〔町の自慢〕町の花「レブンウスユキソウ」にちなみ名付けた町営温泉「うすゆきの湯」。泉温は約50度で、源泉かけ流し。湯上がり後も「ぽかぽかが続く」。
(了)
(2022年7月4日iJAMP配信)