インタビュー 【トップインタビュー】ワーケーションで移住促進=守屋輝彦・神奈川県小田原市長 2022/07/05 08:30

戦国時代に北条氏の城下町として発展し、再建された小田原城の天守閣が今もそびえ立つ神奈川県小田原市。2020年5月に初当選した守屋輝彦市長(もりや・てるひこ=55)は、テレワークに加え、余暇を楽しみつつ仕事もする「ワーケーション」を通じた移住政策を進めている。
市の人口は減少傾向が続くが、東京から新幹線で35分と交通の利便性の高さが売り。江戸時代には宿場町として栄え、明治以降は政財界の要人が別荘を構えた地でもある。「人々はかつて小田原を目指した。魅力をもっとPRすれば人は来る」と考えていた。
折しも、新型コロナウイルス感染拡大で「新しい働き方」が広まり、直近2年間は転入超過に。この流れを一過性に終わらせまいと、空き家となっていた旧片浦支所をリノベーション(大規模改修)し、ワーケーション施設として6月にオープンさせた。
また、「仕事の場だけでなく出会いの場が必要」との考えから、新しい働き方の拠点となる「ワークプレイスマーケット」も今後作る予定だ。「まずは観光やワーケーションで来てもらい、次に仕事の拠点を構え、最終的には移住へ」とストーリーを描く。
相模湾に面する小田原市は、かまぼこや干物、梅干しなどの名産品が有名だ。一方、人口10万人当たりの脳血管疾患の死亡率が県内トップという課題も抱える。塩分の摂取率を抑えようと、市内のスーパーと協力し、「野菜たっぷり(ひそかに減塩)弁当」を開発、販売を始めた。
「食生活を変えるのは難しいし手間もかかる。食事だけでなく、早期の発見治療や健康体操を取り入れ、健康寿命の延伸を図りたい」と話す。
大学で都市工学を学び、神奈川県庁に建築専門職として入庁。約18年間働き、「意思決定の仕組みに政治は非常に重要だ」と痛感した。県議2期を経て市長に。「議会は合意形成しないと前に進まないが、首長は一人しかいないので、最終的には自分の判断で決める」とやりがいを感じている。
〔横顔〕生まれも育ちも小田原。祖父、父ともに小田原市議で、自宅にさまざまな人が出入りするのを間近で見て育った。趣味はサッカー、ゴルフと料理。
〔市の自慢〕歴史、自然環境、食文化など、多彩な魅力がある分、「何でもあるから何にもない」と言われることも。「豪華なおせち料理を作るように、いろいろな魅力をうまく組み合わせていきたい」。
(了)
(2022年7月5日iJAMP配信)