2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】人口減対策は「企業と人」=村岡嗣政・山口県知事 2022/07/07 08:30

村岡嗣政・山口県知事

 高齢化率が全国3位の山口県。3期目を迎えた村岡嗣政知事(むらおか・つぐまさ=49)は、「県の問題は何といっても人口減少。歯止めをかけるには、企業と人を呼び込むことが重要だ」と語る。

 県への移住者数はこの4年で倍増し、2021年は30代男性や0~4歳児も転入超過に。村岡氏は、「意識の変化や、テレワークで仕事を続けながら地方で暮らせるようになってきたこと」が要因だと分析する。

 昨年は、県庁に無料テレワークオフィスを、山口宇部空港にはワーケーション施設を開設し、新しい働き方で人の呼び込みを図った。特に、県内企業との交流が目玉の「山口型ワーケーション」は、「参加企業のニーズに合わせてプログラムを組んでおり、ヒントを得たりインスピレーションが湧いたりと、評価が高い」と話す。

 一方で、企業誘致にも力を入れる。誘致数は8年間で200社を超え、「テルモや小野薬品など、世界的に優れた医療関係の企業を誘致できたことは、県の将来にとって大きなプラスだ」と語る。2024年3月には、山口東京理科大の薬学部から初めての卒業生が出る。学生は女性が多く、「医療関係は女性が働きやすい場所だろう。就職で県内に定着してほしい」と期待を述べた。

 今後は「IT関係など若者や女性の職場になるところを重点的に誘致したい」考えだ。6月には、県として約20年ぶりとなる新たな産業団地整備も表明。「市町と話しながら、第2弾、第3弾と他の地域でも条件が整えばどんどん広げていきたい」と意気込む。

 課題は、脱炭素への対応だ。県のコンビナート企業群は、「企業同士が連携して生産活動を行っている」ことが特徴とし、県には「全体的な調整や橋渡し役、国に対し制度改正や支援策を求めていく役割がある」と説明する。今年度中に複数の計画を策定する方針だが、「知恵を出し合い、コンセンサスを得ながら進めたい」と語った。

 また、県内では石炭火力発電が多用され、水素やアンモニアなどへのエネルギー転換も必要だ。「県内には、技術や次世代燃料の拠点となり得る大規模な設備がある」としつつ、「研究開発や設備投資は大規模で、会社の命運をかけた形になるため、大胆な財政措置が必要になるだろう」と指摘。「企業の動き、目指す形を踏まえ、政府に強く働きかけ実現を勝ち取る」と強調した。

 新型コロナウイルス対策も続く。「コロナ対応をして思うのは、いざというときに命や健康が守られるという安心は何よりも代えがたいということだ」。県内唯一の第1種感染症指定医療機関である県立総合医療センターは、新興感染症対策やへき地医療支援の機能を強化したい考えだ。

 「県土の6割はへき地で、20万人が住んでいる。良質な医療をどう提供するかは大事な課題だ」と指摘。センターでは、高速大容量規格「5G」を用いたへき地医療支援の実証にも取り組んでおり、「県のどこに住んでいても、医療面で安心できる環境を整えたい」と力を込めた。

 〔横顔〕東大経卒。総務省を経て14年に初当選。19年の下関海峡マラソンは3時間59分11秒で完走し、目標だった4時間切りを達成した。

 〔県の自慢〕日本海側の「元乃隅神社」や「角島大橋」などの優れた景観。加えて山や瀬戸内海、温泉など観光の要素がそろっており、アウトドアを「山口県のポテンシャルとして伸ばしていきたい」という。

(了)

(2022年7月7日iJAMP配信)

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