2022/令和4年
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インタビュー 【トップインタビュー】小さな町づくり、しっかりと=薗田靖邦・静岡県川根本町長 2022/07/12 08:30

薗田靖邦・静岡県川根本町長

 町の94%を森林が占め、NPO法人「日本で最も美しい村」連合に加盟する静岡県川根本町。薗田靖邦町長(そのだ・やすくに=63)は移住定住促進と主要産業の茶業や観光業などの活性化を公約に掲げ、2021年10月に初当選した。「町民の笑顔と安心を思い浮かべながら、小さな町づくりをしっかりやっていかなきゃいけない」と意気込みを語る。

 大きな課題の一つが急速な人口減少だ。7月1日時点の人口は6136人で、5年で約1000人減った。町は生産年齢人口を呼び込もうと企業誘致に取り組み、17年のIT企業「ゾーホージャパン」(横浜市)を皮切りに、県外に本社がある企業4社がサテライトオフィスか支店を開設した。また、整備済みの光ファイバー網を活用し、「企業の働き方改革の一環として、山の中でワーケーションを行う環境をつくりたい」と語る。

 21年には小学校で里山親子留学を実施。県内外の親子2組が参加し、児童3人が授業を体験した。地域と触れ合う教育機会を提供し、子ども中心の移住定住を促進する狙いがある。

 新型コロナウイルスの流行で観光業は打撃を受けたが、「これからどうしていくか考えたことで、かえって町を強くできたのでは」と振り返る。「コロナを弱みにはしたくない」。逆境を逆手に取って縦割り行政を見直し、各課の連携を強化。町長自ら、観光商工課と農林課に対し、豊かな自然を生かしたグランピング施設の整備などを提案した。「二番煎じでも三番煎じでもいい。もっともっと知恵を絞ってほしい」と職員を鼓舞する。

 JR東海のリニア中央新幹線静岡工区のトンネル工事で流量減少が懸念される大井川は、貴重な水資源だ。多様な生き物が生息し、町全域が南アルプスユネスコエコパークに登録されていることから、「もっと生態系を調査してほしい」とも強調。「住民に理解してもらわないことには進められない」と町民への丁寧な説明を求める。

 就任後、最も記憶に残っているのは町議会の3月定例会だ。小学校4校、中学校2校を統合して義務教育学校2校を新設する計画をめぐり、22年度当初予算案から事業費5億1800万円を削除した修正案が可決された。児童生徒の増加が見込めない中での大規模事業に賛同を得られなかった形だが、「お金のことはいいから、とにかく子どもたちの教育のことはやらなきゃいけない」と主張。「2校案はもう1回作り直してやっていく」と、内容を改めた上で再提案する方針だ。

 長所は「挫けないところ」。「学校のことが落ち着いたら、皆さんの考えを聞きながら町づくりを進めたい」と、町民との意見交換や交流にも意欲を示す。

 〔横顔〕大学卒業後、数年間の会社勤務を経て、江戸時代から続く茶農家を継いだ。田中角栄に憧れて政治家を志し、13年に町議に当選。2期目に副議長、議長を務めた。趣味はゴルフ。

 〔町の自慢〕農林水産祭で日本茶業界初の天皇杯を受賞するなど、品質が高く評価されている「川根茶」。エメラルドグリーンのダム湖を望む「夢のつり橋」。

(了)

(2022年7月12日iJAMP配信)

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