2023/令和5年
131日 (

コラム 【公務員の段取り力10】笑いとハキハキの勧め 2022/08/08 00:00

藤枝市人財育成センター長 山梨秀樹氏

静岡県藤枝市人財育成センター長 山梨秀樹

◇「笑い」は万能薬

 厳しい仕事の中でも賢い職場の過ごし方があります。できるだけ声を上げて笑う癖をつけることです。たかが「笑い」と侮ることなかれ。笑いはあなたと職場の雰囲気を変える万能薬で、良い結果や成果を生む源になります。つらくても思い詰めない、明るい前向きな指向、その「気」を持つことが、あなたとあなたの職場を変えます。笑い声は誰が発していても、そこで働く人々の救世主になるのです。

 人は感性と感情の動物です。気分を自ら変える習慣は、自分でつけることができます。行政経営で最大の成果を生むのは、笑いを交えた明るい会話の力=「笑談力」だと思います。笑いのある職場は思考が柔軟になり、アイデアが出やすくなります。仕事がスムーズに進んで成果が上がりやすくなり、次第に職場全体の生産力がアップしていきます。それはいつしか組織の外にも伝染します。明るいまちづくりの最初の一歩は、職員が声を上げて笑うことからです。

◇優しい言葉を使う習慣

 以前の連載でも述べたように、事業を進める際は、常時小まめに連絡を取り合いましょう。相手が情報を持っていないという前提で伝えることが大事です。その際、感謝の気持ちも併せて相手に早く伝えることが肝心。「ありがとう!」と一言添えればいいのです。こうした気遣いと機敏さ、レスポンスの良さで、あなたは優しくてしかも優秀な人だという二つの評価を役所の内外で得ることになります。

 優しい言葉が頻繁に飛び交う職場は元気で、新たな発想や課題解決案は多くなり、仕事の漏れや落ち度は少なくなります。その場、その座の雰囲気を明るくし、周囲の気持ちを和ませ、笑い、笑わせる。会話しやすい気持ちのいい空間を、明るく優しい言葉でまずあなたがつくるのです。管理職や経営陣など内外に大きな影響を与える立場になると、さらに組織経営の重要な要素になります。ですから、若いうちからやっておきましょう。

 日々のわずかな心掛けで、必ずできるようになります。これが「職場の空気をつくる段取り」です。あなたや組織、地域住民にとって非常に優れた効果と成果を生んでいきます。

◇明るい言葉と豊かな表情

 庁内だけでなく、丁寧に選んだ言葉による豊かな表現は、窓口業務や現場での住民説明・協議などの際でも不可欠です。行政は、サービス業の代表格。明るく分かりやすい説明とともに、真摯(しんし)な対話の中で、時には行政側の事情や、堅苦しい法制度の中身も説明しなければなりません。ですから言葉の選び方はもちろん、豊かな表情がとても大事です。

 公務員は総じて融通の利かない職業だと思われているせいか、職員はクールで寡黙で表情がないと言われることがあります。しかしそんな評価を受けるような職員はもう落第でしょう。人々に寄り添い、向き合い、にこやかに誠実に語る訓練を、毎日少しずつしていきましょう。熱を帯びた明るく豊かな表情が公務員の必須条件であり、評価を上げるのです。

 ただ、われわれにはサービスの提供(給付行政)ばかりでなく、時に公権力を行使して、地域、社会のルールを人々に守っていただく局面もあり(規制行政)、毅然とした態度でルール(法令など)の順守を住民にお願いしなくてはなりません。これは民間企業にはない役割です。公共の福祉を守るための厳しい表情も、時には求められる場合があります。気持ちの切り替えも必要になります。

◇説明はハキハキと

 口頭で相手に趣旨や依頼内容を伝える場合、中身の簡明さや分かりやすさはもちろんですが、発声の明瞭さやトーン、大きさも重要です。役所の窓口には高齢の方々も多く訪れます。法制度の趣旨や手続きなどを口頭で説明する場合、口をちゃんと開け、元気な声で話しましょう。口調が丁寧でも発音が不明瞭だと相手は聞き取れません。その上、手続きが複雑だと相手はいら立ち、ついには怒り出します。あなたの段取りも台無しです。

 苦情への対応も同様です。相手が興奮し怒っていると、こちらの回答や説明はどうしてもつぶやくような小声になりがちですが、それではいけません。声をきちんと出し、ハキハキと話しましょう。一通り丁寧に話を聞き、相手が少し落ち着いたところで、こちらの対応案などに触れます。まず役所として今できることを伝え、次にすぐにはできないことを説明します。相手はそれを求め、期待しています。

 怒りの迫力に押され、臆してしまうと、結局相手の要請に応えられません。行政側の事情も理解されませんから、こちらの対応予定も狂ってしまいます。誠実に聞き、こちらに過ちや手違いがあればまず丁重におわびをします。そして答える際はよく聞こえる声で、行政用語でなく誰でも分かる言葉を選んで話すことです。

 私は早口でよく失敗します。ゆっくりと話しましょう。(了)

◇山梨秀樹(やまなし・ひでき)氏のプロフィル
1983年静岡県庁に入り、旧総理府(現内閣府)地方分権推進委員会事務局、静岡県総務部合併支援室、藤枝市行財政改革担当理事、同市副市長、静岡県理事(地方分権・大都市制度担当)などを経て、19年4月から藤枝市理事。同年6月に人財育成センター長に就任した。同県内を中心に、公務員の「言葉力」をテーマにした研修・講演の講師を務めている。

【公務員の段取り力】

同一カテゴリー記事

  • 【新連載】【職場が輝く知恵とワザ1】自分で職場を経営しよう 2023/01/20 11:00

     「いよいよ私も『長』のつくポストに」「とうとう自分も管理職」…。知識と技量を生かして活躍する主査・主任や、部下の指導と現場の対応に多忙な主幹・係長の方々には、期待とともにさまざまな不安があると思います。仕事でも人間関係でも、気になったり心配だったりする気持ちを拭い去るため、今からやっておくべきことは何でしょうか。現場リーダーや管理職として配慮すべき点もあります。日々の心構えや、どんな働き方、過ごし方をすればいいのかも知りたいでしょう。静岡県藤枝市人財育成センター長 山梨秀樹

  • 【新連載】【変わり始めた公務組織1】テーマをピックアップ 2023/01/10 11:00

     新連載「変わり始めた公務組織」を執筆する人事院の植村隆生です。若い公務員や就職先に国や自治体を考えている学生の皆さんを主な対象に、キャリアプランを考える際の参考になる情報を提供したいと思います。人事院事務総局企画法制課長 植村隆生

  • 【新連載】【シティプロモーション再考1】自治体実態調査のプロローグ 2022/12/23 11:00

     本連載のテーマは、地方自治体が展開するシティプロモーションの実態の考察です。素材は、全国の自治体を対象にしたアンケート調査です。その回答に加え、私が実施したヒアリングを基に一定の見解を示します。関東学院大学法学部准教授・社会構想大学院大学特任教授
    牧瀬 稔

  • 【ナッジ入門編11】連載から顧みる基本と実践 2022/12/13 11:00

     本コラム「ナッジ入門編」で、これまで10回にわたってナッジの基礎知識や行政現場での活用事例を紹介してきました。今回は、これまでの内容を振り返り、入門編の総括とします。この連載は、行政現場へのナッジ普及を目指す特定非営利活動法人PolicyGarageが執筆・依頼しています。PolicyGarage事務局/慶応大学看護医療学部特任助教 赤塚永貴

  • 【公務員の段取り力12】マネジメントは自らの手で 2022/12/02 11:00

     これまでさまざまな視点やケースを基に、公務員の仕事や日常の段取りについて述べてきました。今回で連載を一区切りにします。まとめとして私がお伝えしたいのは「自分の職業人生は自分でつくり、自分がマネジメントする」ということです。静岡県藤枝市人財育成センター長 山梨秀樹

  • 【地方議員の視点10】華やかで意義のある場 2022/11/22 11:00

     議会と言えば、議員が演台で発言するイメージを持つ方も多いと思います。地方議会はそれぞれでルールが異なりますが、議員はさまざまな機会に演台で発言しており、甲府市議会では、議員提出議案の説明や議案に対する討論、委員長報告などの際に登壇します。そして、議員が一番多く演台に立つのは、市政一般質問の時です。甲府市議会議員 神山玄太

  • 【いま公務の現場では10】公務員と政治の関係 2022/11/09 11:00

     この連載も10回目を迎えましたので、取りあえず一区切りにしようと思います。今回は、公務員と政治の関係がテーマです。…霞が関で実際に働いている立場から、思うところを記したいと思います。人事院事務総局企画法制課長 植村隆生

  • 【公務員の段取り力11】見せよう、そして語ろう 2022/10/28 11:00

     あなたはプロとして、自分の仕事を周囲にオープンにしていますか? 成果だけではなく途中経過も、仲間や上司、そして住民に随時報告し、あなたの仕事を「見せる」ことは重要です。静岡県藤枝市人財育成センター長 山梨秀樹

  • 【地方議員の視点9】普段は何やってるの? 2022/10/17 11:00

     「議員って、普段は何をしているの?」「私服だけど、きょうは休みなの?」「年内はいつまで仕事なの?」…。これらの言葉は、議員になって市民の皆さんから聞かれることが多い質問ベストスリーです。甲府市議会議員 神山玄太

  • 【ナッジ入門編10】実践7:バイアスを考える 2022/10/04 17:00

     行政現場でナッジを活用したケースを、各地の自治体のリレー方式で紹介しています。今回は、岡山県真庭市の環境関連の試みです。…真庭市は職員有志でナッジを学び、情報交換をしています。今回は、環境課で取り組んだナッジの事例を紹介します。真庭市産業観光部農業振興課 藤田浩史