インタビュー 【トップインタビュー】町民の声を反映するまちづくり=角和浩幸・北海道美瑛町長 2022/08/03 08:30

北海道のほぼ中央に位置し、四季折々の農村景観が丘陵に広がる「丘のまち」美瑛町。人口減少などの課題を抱える中、角和浩幸町長(かくわ・ひろゆき=55)は「町民の声を反映するまちづくり」を目指し、町民の声に耳を傾けてきた。
2005年に美瑛町に移住後、農業を始め、11年から町議を2期務めた。従来の町政は「トップダウンで、下からの意見が上がりにくい雰囲気だと感じた」と言い、「住民自治の行政を作りたかった」と振り返る。
19年の町長就任後は「住民の意見やニーズに応えるのが行政が存在する意義」という信念の下、町民の声を町政に反映する仕組み作りに尽力してきた。町民と対面で意見交換をする「びえい未来トーク」の実施に加え、ホームページで町長に直接意見できるメッセージフォームも設けた。寄せられたメッセージには全て目を通し、自ら返信もしているという。
19年度に開始した「町民まちづくり提案事業」では、町民から事業提案を受け付け、21年度までの3年間で約90件の案が寄せられた。実際に、公共施設のバリアフリー化や公園の水遊び広場の整備など、10件を超える案が事業化につながっている。「利便性が向上して、喜んでもらえればそれに越したことはない」と目を細め、「実現を積み重ねていくことで、意見を言いやすい環境になるのでは」と期待を示す。
並行して、自治基本条例の制定に向けた検討も進めている。政策決定への住民参加の規定を具体的に盛り込むなど、「確実に町民が行政に参加できる形」として、今年度中の制定を目指す。素案作りにも町民が参加しており、「『町民の声を聞く』という住民自治を制度として完成させたい」と力を込める。
町の人口は1960年の2万1743人をピークに減少し、約9600人になった。対策として、関係人口創出のための取り組みにも注力する。テレワーク体験用の住宅を整備したほか、町外在住者対象の勉強会や町民との交流会などを行う「コ・ワーケーションビレッジ事業」を開始した。
「最終的には移住してもらうのが理想だが、そこに至らなくても町と関わりを持ってもらうことで、町内の経済振興につながる環境づくりに努めたい」と意気込みを示す。
昨秋、まちづくりの方向性を示す「美瑛町共有ビジョン」を策定。町民と職員が約1年間協議を重ね、20年後に目指すべき姿7項目を定めた。今後はビジョンに沿って施策を打ち出してゆくが、「最も重視しているのは町民の声の反映。小さいながらも自立し、町民も幸せに暮らせる町を目指したい」と前を見据える。
〔横顔〕神奈川県出身。新聞記者を経て05年に移住した。農業研修を受けて新規就農し、畑の敷地内でコテージを運営。現在も業務の傍ら、農業を営む。
〔町の自慢〕色とりどりの小麦や野菜畑、「青い池」など、美しい自然景観に恵まれている。
(了)
(2022年8月3日iJAMP配信)