インタビュー 【トップインタビュー】駅ごとの「カルテ」でJR路線維持=斎藤元彦・兵庫県知事 2022/08/24 08:30

昨年8月の就任から1年が経過した兵庫県の斎藤元彦知事(さいとう・もとひこ=44)。この1年を振り返り「県内への投資や経済を活性化していくための土台づくりの1歩が踏み出せた」と語る。JR西日本の不採算路線をめぐる課題では、路線の維持を強調。駅前の活性化に向けて観光資源の可視化を図るため駅ごとの「カルテ」作成を打ち出すなどし、ローカル線維持を目指す考えだ。
JR西は4月、利用者の減少で維持が難しい17路線30区間の収支を初めて公表した。県内では2018~20年度の平均で11億7000万円の赤字となった山陰線城崎温泉(豊岡市)―浜坂(新温泉町)間など4路線が示された。
斎藤氏は「維持を前提にすることが大事」と訴え、4路線の駅を対象に官民連携で駅前の活性化を図る方針を示した。具体的な活性化策の展開に向けた準備として、22年度中に各駅のカルテを作成し、地域資源の可視化を図る。カルテには駅付近の観光資源や地域活性化に興味がある若者の有無などを記載する見込みだ。
ローカル線の駅前活性化といえば、花を植える美化運動などになりがちだが、斎藤氏は「全く違う切り口で若者がプレーヤーとして参加していくような仕掛けを各駅ごとに作る」と強調。これまで注目されてこなかった観光資源などを若者がインターネット交流サイト(SNS)を活用して発信していく取り組みなどを思い描く。
25年の大阪・関西万博に向けた施策も斎藤氏が掲げる重点の一つ。万博開催中に持続可能な開発目標(SDGs)をテーマにした「ひょうごフィールドパビリオン」を県内で展開する。外国人観光客らを呼び込む考えで、「兵庫の成長・発展につながるような、一過性ではないものにする」と万博後も見据えた施策にしたい考えだ。
政府には、農地法で規制されている農地の転用や市街化調整区域の開発の緩和を要望する。県内は高速道路網が発達しているとし、「インターチェンジ付近での物流拠点進出のニーズが高いのに、土地利用規制の問題でこれまで好機を逃してきている」などと主張。「進出の話があるのに企業誘致ができないのは、人口活性化対策としては大きな問題だ」と危惧する。「土地利用は兵庫県の中長期的な人口減少対策のキーになる。柔軟な形でやれるようにしてほしい」と緩和を求めた。
〔横顔〕座右の銘は祖父が口にしていた「雲中雲を見ず」。雲の中にいると自身のことが見えなくなることから、「知事は予算編成も含めて権限を持つ。言動や振る舞いを自戒するという意味で大事にしている」。
〔県の自慢〕食材が豊か。松阪牛、神戸牛などブランドビーフの素牛(もとうし)である「但馬牛」をはじめ、県内各地の野菜や瀬戸内海と日本海双方の海産物も魅力。「兵庫は食で突き抜けている」。
(了)
(2022年8月24日iJAMP配信)