インタビュー 【トップインタビュー】「誰一人取り残さない」町政を=橋元伸一・宮城県山元町長 2022/08/23 08:30

宮城県南部に位置する山元町は、東日本大震災からの復興を急ピッチで進めてきた。ただその半面、橋元伸一町長(はしもと・しんいち=61)は、被災した人もそうでない人も含めて、十分に住民の声を聞けたのだろうかという思いを抱いてきた。そのため「誰一人取り残さない」との決意で町政に当たる。
町内は震災により、総面積の約4割が津波で浸水した。これを受け、復興住宅の整備や市街地の移転が行われた。国の補助金の申請期限もあり、復興計画が駆け足で策定されたと橋元町長は振り返る。町の復興政策に「すべて否定するつもりはないが、もう少し町民の声を聞いてほしい」と感じ、2015年から6年にわたって町議を務めるきっかけになった。
町は市街地の整備を中心に事業を進め、復興事業には10年で約3000億円が投入された。被災者の生活再建を急ぐ必要があった一方で、「行政主導でどんどん進め、被災者が引きずられているように見えた」と指摘する。また、復興以外の施策は優先順位が後退した面は否めないとして、被害が少なかった内陸部の町民には「言いたいことものみ込んで理解してくれた」と話す。
現在1期目の橋元町長は、復興施策を引き続き推進するとともに、その他の町政課題にもバランスよく取り組むつもりだ。「町長になって見えたこともいっぱいある」と語るように、新型コロナウイルス対策も待ったなし。既存の集落間をつなぐため、交通施策の全面的な見直しに着手するほか、移住・定住促進の一環として給食費無償化の実現も目指す。さまざまな住民の声に耳を傾け、「不公平感がないようにしたい」と強調する。
目指す町の姿は「環境の良い田舎」。「田舎が好き。ここを都会にしようとは思っていない」。車で1時間ほどで仙台市内に着く交通の便の良さや、夏は涼しく冬は温暖で緑豊かな環境をアピールする。
〔横顔〕町内の出身。趣味は体を動かすこと。もっぱらテレビを通じてだがスポーツ観戦もする。
〔町の自慢〕イチゴの産地として名高く、市場には出回らないリンゴも甘みが強い。
(了)
(2022年8月23日iJAMP配信)