インタビュー 【トップインタビュー】「親元補助金」で定住者確保=中山哲郎・兵庫県稲美町長 2022/08/29 08:30

大都市・神戸に近接する一方、豊かな自然が残る兵庫県稲美町は農業が基幹産業の一つ。コメやメロン、トマトなどのブランド化を進め生産者を後押ししており、中山哲郎町長(なかやま・てつろう=49)は「阪神地域が隣にあって、売り先は確保できている。これほど農業をやりやすい町はない」と力を込める。移住・定住促進政策にも工夫を凝らし、「オンリーワンの町づくり」を目指す。
担い手不足が深刻化する中、農業を振興していくのは容易ではなく、中山町長は「スマート農業や大規模化を進め、少ない人数でも効率的に農業をやっていく」と展望を語る。農産物の「地産地消」も重視。各小中学校で給食を調理し、子どもたちに提供できる体制を町直営で整えており、「子どもたちに稲美町で作られた安全でおいしい食材を食べてもらっている」と胸を張った。町名が「稲美」なだけに、コメへのこだわりは強く、全国の先進事例も参考に、有機米栽培の浸透にも取り組む考えだ。
人口減少への対応では、親元近居住宅取得等支援補助金(親元に住もう補助金)制度を掲げる。父母・祖父母らが町内にいる人が自らも町内に家を新築するなどした場合に補助金を交付するユニークな仕組みだ。いったん地元を離れ、大都市で暮らす町出身者を呼び戻して定住につなげる狙いがあり、中山町長は「近くに住み親の手を借りられれば、子育てが楽になる。それが(将来の親の)介護にもつながり、地域の町づくりを支えるもとにもなる」と好循環を期待する。
大学卒業後、町職員として27年間勤めた後、今年5月の選挙で町長に初当選。「町長としての責任は実感しているが、町長であっても一職員であってもやるべき仕事は変わらない」と断言。職員として先輩だった人も部下だった人もいるが、やりにくさはないという。「職員全員、チームで(町を)支えているという意識がある」と強調した。
〔横顔〕稲美町職員から町長に転身。兼業農家でもあり、休日は田んぼの草取りなどで汗を流す。変化に対応できる行政を重視。「先を読む力と行動力がある」という坂本龍馬を尊敬する。
〔町の自慢〕町に点在するため池。コメ作りに欠かせない水源であるとともに、美しい風景をつくりだす。ウィンドサーフィンなど水辺のアクティビティーを楽しむ人も増え、観光資源にもなっている。
(了)
(2022年8月29日iJAMP配信)