インタビュー 【トップインタビュー】大学・企業誘致で「学び働けるまちに」=尾花正啓・和歌山市長 2022/09/09 08:30

8月の和歌山市長選で3選を果たした尾花正啓市長(おばな・まさひろ=69)はこれまで、若者らの市外への流出を抑制するため、大学誘致などに力を入れてきた。その効果もあり、2019年に市への転入者数が転出者数を45年ぶりに上回った。尾花氏は「さらに大学と企業を誘致し、学び、働けるまちにしていきたい」と意気込む。
長年続いていた転出超過の原因の一つと考えられたのが、県内高校生の県外大学・短大への進学率の高さ。県によると、1978年度から41年連続で全国ワースト1位で、80~90%台で推移していた。これを受け市は、大学誘致に乗り出し、18~21年度に中心市街地に5大学5学部を誘致。19年度にはワースト1位を脱した。
尾花氏は「大学側の初期投資を抑えるために小学校の廃校舎を無償提供するなどした。また、看護師、理学・作業療法士、薬剤師、保育士といった市にとって必要な人材を育成できる大学の誘致を進めた」と振り返る。20年には、再び転出超過に転じたものの、「ふるさとで学べる機会をさらに増やしたい」と、さらなる誘致に意欲を示す。
「福祉充実の財源確保のためには経済成長が必要だ」として、経済対策にも取り組む考えだ。「地元企業には生産性向上に資する支援を行う。また、職業の選択肢を多くするため、市に不足している産業の企業を誘致していきたい」と話す。
市街地のにぎわい創出に向け、「和歌山城周辺の水上交通を推進し、『かわまちづくり』に取り組みたい。ポストコロナでは『稼げる観光』を目指す」と強調。11月からは市民の交通手段確保のため、鉄道駅やバス停に接続する地域バス運行の実証実験を予定しており、「県都として活力あるまちにしていく」と力を込める。
子育て支援については「中学校で全員給食を早期に実現し、給食費を無償にしたい。医療費無償化の対象も高校生まで拡充する」という。
市では昨年10月、紀の川を南北につなぐ水管橋が崩落し、市北部の約6万世帯で断水が生じた。この事故を教訓に、「川北部への浄水場の新設、川の南北をつなぐ送水管の複線化などを進める」と説明。水道行政のインフラ部門を厚生労働省から国土交通省に移管する政府の方針については、「(移管を)国に要望し続けてきたので、評価している」とした上で、「財源の確保など国の支援を求めていく」と語った。
〔横顔〕東大卒。80年に和歌山県庁に入り、県土整備部長などを歴任。14年の市長選で初当選した。趣味は愛犬「くうちゃん」との散歩。1日1万歩を目標にしている。座右の銘は「温故知新」。
〔市の自慢〕美しい自然と都市の魅力が和歌山城を中心にコンパクトにまとまっている。古くから歌人に詠まれた和歌の浦などの景勝地や、江戸時代に商業都市として栄えた過去があり、文化・歴史が豊か。
(了)
(2022年9月9日iJAMP配信)