2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】スマートICで観光振興=湯川裕司・神奈川県山北町長 2022/09/15 08:30

湯川裕司・神奈川県山北町長

 神奈川県西部に位置し、町域の9割が丹沢大山国定公園などの山岳地帯で占められる山北町。2010年に初当選し、4期目に入った湯川裕司町長(ゆかわ・ゆうじ=70)は、新たな玄関口となる新東名高速道路の山北スマートインターチェンジ(IC)開業に向け、さまざまな観光振興策のアイデアを検討している。

 スマートICが設置されるのは、未開通の新秦野IC(神奈川県秦野市)―新御殿場IC(静岡県御殿場市)間で、東京方面に乗り降りを限定したハーフインター。町には東名高速のICがなく、要望活動の末、14年に設置が決まった。

 トンネル工事が難航し、開通時期は未定とされているが、湯川町長は「24年秋には開通するのでは」と期待。ただ、開通後すぐにはIC周辺の整備に着手できないため、「もともとあるもの(観光資源)を生かすしかない」と考えている。

 一つは、日本の滝百選に名を連ねる「洒水(しゃすい)の滝」だ。遊歩道に工夫を凝らしたり、「インスタ映え」するスポットをつくったりして「来るたびに少しずつ違うと思わせたい」と語る。

 三保ダム建設で造られた丹沢湖や、「ユーシンブルー」として水面の美しさが知られるユーシン渓谷も大事な資源だ。人工知能(AI)を活用し、「『自分で選んだ』と思わせるようなお薦めコースに誘導できれば」と構想を練る。

 東名高速との付き合いは長い。高校生だった1969年に全線開通した際、生家の土地が用地買収され、91年の拡幅では母屋も対象となった。「自宅を壊すとき、何だか知らないが涙が出た」と振り返る。

 当初は騒音や排ガスに悩まされ、「窓の網戸が油でベタベタ」に。東名で起きる事故もよく見た。御殿場からカーブを曲がってくるポルシェが、スピードの出し過ぎで浮き上がり、ガードレールに触れないまま落下したことも。「時速100キロの中で起きる事故は想像を超えていた」という。

 人口減少が進む中、町長就任後の12年間は、懸案だった小中学校の統合や企業誘致、JR東山北駅周辺の再開発などに取り組んできた。残るは新東名の開通で、「人生のかなりの部分を関わってきた。全線開通するのを見届けたい」と思いを寄せた。

 〔横顔〕親族に政治家が多く、若い頃から政治が身近だった。最近は料理が趣味で、自宅で採れたミョウガやカボチャの一種であるコリンキーで甘酢漬けの自作も。休日は町外の観光地に車を走らせ、町の観光行政に思いをめぐらす。

 〔町の自慢〕かつて鉄道の町として栄えた名残を残すD52型蒸気機関車がJR山北駅近くの公園に保存されていたが、16年に再び動かすことに成功。「日本で唯一の動くD52」が自慢。

(了)

(2022年9月15日iJAMP配信)

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