2023/令和5年
327日 (

コラム 【地方議員の視点9】普段は何やってるの? 2022/10/17 11:00

甲府市議会議員 神山玄太氏

甲府市議会議員 神山玄太

 「議員って、普段は何をしているの?」「私服だけど、きょうは休みなの?」「年内はいつまで仕事なの?」…。これらの言葉は、議員になって市民の皆さんから聞かれることが多い質問ベストスリーです。

 ここから分かるのは、地方議員の活動が住民に伝わっていないということです。私は議員活動をできるだけ「見える化」しようと情報発信に努めていますが、まだまだ足りないと反省しています。

◇条例による定例会開会月

 地方自治法第102条第2項で「定例会は、毎年、条例で定める回数これを招集しなければならない」と規定しており、これを受けて甲府市は定例会の回数を定める条例で「毎年4回とする」としています。さらに市議会定例会規則で「毎年3月、6月、9月及び12月に開く」と決めています。

 つまり、甲府市議会は3月、6月、9月、12月に定例会が開かれますが、裏を返せば、これ以外の月は定例会がないわけです。テレビで議会中継をしたり、議会の様子が報道されたりしており、市民には、議場や委員会室で会議をしていることだけが議会活動と思われがちです。定例会は12カ月のうち4カ月開かれ、残りの8カ月は開かれませんから、確かに「普段は何をしているの?」と思われても仕方ないかもしれません。

◇活動のモデルケース

 あくまでもモデルケースとして、私の議会活動を参考に「市議会議員の1日」というスケジュール表を作ってみました(下図参照)。

図「市議会議員の1日」

 定例会が開かれているときは、本会議や常任委員会の質問、政策提言の準備、議案調査などが活動の中心です。会議の準備、質問、提言、そしてその報告と、日々の議会日程に合わせて活動を展開します。

 定例会と定例会の間の2カ月間は、私の感覚では「あっという間!」です。この間に議員は何をやっているかというと、政策研究や課題となっている事項のヒアリング・現地調査、市役所で職員の方々と意見交換などをしています。また、視察研修に出掛けたり、次の定例会に向けた質問や政策提案づくりをしたりするなど、ミッションはたくさんあります。閉会中審査と言って、定例会中でなくても常任委員会を開催できます。特に甲府市議会は議会基本条例を制定した際に「常任委員会は、所管事務調査及び政策研究を積極的に実施し、委員間の討議を経て、その結果を議会に報告するものとする」と規定したので、定例会のない月でも積極的に常任委員会を開いています。

 この他、市民からの要望を聞いたり、議会に関わる会議や会派の集まりに出たり、地域活動や政党に所属している議員であれば党務活動も担います。そのため、議会に頻繁に足を運んでいます。

 市民の意見を伺ったり、自身の活動を伝えるための街頭演説やポスティングをしたりするなど、党勢拡大のための政治活動もしています。地方議員には秘書を雇用する余裕などなく、基本的に「ワンオペ」活動ですから、これらの段取りも自分でしなくてはなりませんし、書類作成やホームページの更新、各種支払い、郵送などの事務作業も一人でしなくてはなりません。

 活動の予定が入るのは平日も休日も、朝も夜も関係ありません。相手の都合に合わせて予定は埋まっていきます。今は新型コロナウイルス感染症の影響で減ってきていますが、土曜や日曜は地域行事が何かとたくさん入ります。朝は「朝活」と称して勉強会を開いています。仕事が終わった夜遅い時間に、若い世代の方々との意見交することもあります。

 このように地方議員は、意外と活発に活動しています。

◇専業ではない人が多い

 ここまで紹介した議会活動の様子はあくまでもモデルケースです。地方議員と言ってもそれぞれ違う立場で議員活動をしています。人口が100万人を超える政令指定都市から1万人台の小規模な市まで市議会議員もさまざまです。都道府県議会議員、町村議会議員もいます。私は中核市の市議会議員で、何とか議員報酬で議会活動に携わり、自分の生活もできていますが(政治活動に対して寄付もいただいています)、全国の地方議員を見てみると、議員報酬だけで議会活動しながら生活できる人の方が少数です。多くが他に仕事を持っており、議会活動の合間に生計を立てるための仕事の予定も入っています。

 今回は、私が議員になって市民の皆さんから聞かれることが多い質問ベストスリーを踏まえ、地方議員の活動の様子をお伝えしました。曜日も暦も関係なく、朝起きてから寝るまでずっと仕事をしている感じですが、逆に、平日に何も予定がない日が突然できる場合もあります(もちろん事務仕事がなくなることはありませんが)。そんなときにちょっと休んで、山に登ったり、飼い犬と遊んだりして気分転換しています。知恵を絞らなければならない仕事なので、朝から晩までずっと何かといろいろ考えていて、とてもワーカホリックだと思いながらも、とてもやり甲斐を持って取り組んでいます。(了)

◇神山玄太(かみやま・げんた)氏のプロフィル
1982年甲府市生まれ。金沢大学法学部を卒業し、早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。日本インターネット新聞社で記者として勤務後、甲府に戻る。2010年、国会議員政策担当秘書資格試験に合格。11年に甲府市議に初当選。12年に早稲田大学パブリックサービス研究所招聘研究員に就任。第6回マニフェスト大賞でグッド・マニフェスト優秀賞を受ける。15年の甲府市長選挙では次点で落選。甲府市議に2期目の当選後、17年9月から1年間「関東若手市議会議員の会」会長。19年4月から3期目の甲府市議。山梨英和大学で非常勤講師を務めた経験も。「ワイン県」山梨で活動する議員として21年にワインエキスパート資格も取得。

【地方議員の視点】

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