2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】子育て施策「常にユーザー意識」=酒井直人・東京都中野区長 2022/09/27 08:30

酒井直人・東京都中野区長

 「子育て先進区」を目指し、産前産後のケアに力を入れる東京都中野区。5月の区長選で再選を果たし、2期目に入った酒井直人区長(さかい・なおと=50)は、「子育て施策の充実は、常にユーザーを意識してやっている」と強調する。区内では子ども食堂など住民らが子どもを支える動きも広がっており、「支援のネットワークが少しずつできてきた」と手応えを感じている。

 就任以来、子育て世帯とのタウンミーティングを重ねる中で「東京は核家族が多く、家事・育児を親族などに頼ることができず、特にお母さんは『ワンオペ』で非常に辛い」と実感。産後のケア事業を拡充した。

 例えば、母親の疲労回復や赤ちゃんのケア、育児相談ができる事業について、「1歳未満の子どもがいる世帯」全てに対象を拡大。双子や三つ子などの多胎児を育てる家庭向けには、交通費を支給したり、家事を手伝うサポーターを派遣したりする事業を新設した。

 公園で自由に遊べる「プレーパーク」や子ども食堂など、コロナ禍の中で子どもたちの遊び場や居場所をつくる取り組みも広がっている。区はこれらを運営するNPOなどを支援しており、「ネットワークを引き続き広げていきたい」と意気込む。

 「2期目の宿題」と語るのは、子どもの貧困対策だ。区内の約1万9000世帯を対象に大規模なアンケート調査を実施。その結果、家で勉強する場所がない、勉強机がない子どもが貧困家庭に多く、「普通の家庭とはかなり差がある」ことが分かった。図書館・児童館に夜も利用できる学習スペースを設置するなど「できることから始めた」が、対策は緒に就いたばかりだ。

 新型コロナウイルス感染症への対応には平時の取り組みが生きた。高齢者が住み慣れた地域で医療や介護を受けられるよう、区は訪問診療・介護の推進など地域の関係機関との連携を強化。区長自身も職員時代に担当者として関わってきた。オンライン診療や、薬剤師が薬を持って患者を訪問するコロナの自宅療養者対応は、「地域包括ケアにしっかり取り組んできたから非常にうまくいった」と振り返る。

 コンサートホールなどを備え、区を代表する施設として知られる中野サンプラザは、23年で閉館。周辺の再開発と一体的に建て替え、28年に新しいサンプラザが完成する。「都庁よりちょっと高くなる予定なので、東京中から見える建物になる。日本中の人たちに認知されるにぎわいの拠点になれば」と笑顔を見せた。

 〔横顔〕岐阜県土岐市出身。1996年中野区に入庁。広報担当課長、地域包括ケア推進担当課長を歴任し、2018年6月区長に初当選。料理が趣味で、妻と娘の夕飯を作って出勤することも。

 〔区の自慢〕中野駅北口の飲み屋街。チェーン店がほとんどなく、個人経営の人気店が多い。

(了)

(2022年9月27日iJAMP配信)

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