インタビュー 【トップインタビュー】閉塞感打破へ「経済立て直す」=打越明司・鹿児島県指宿市長 2022/09/28 08:30

全国でも指折りの温泉保養地、鹿児島県指宿市。新型コロナウイルス禍で大打撃を被る中、負託を受けた打越明司市長(うちこし・あかし=63)は「弱り切った経済を立て直す」と不退転の決意だ。「人を迎えて稼ぎ、農畜水産や食品加工の付加価値を高めて稼ぐ」ための仕掛けを矢継ぎ早に放ちつつ、閉塞(へいそく)感の打破に向け、市民を巻き込む形でデジタル化にかじを切った。
2006年に旧指宿市・山川町・開聞(かいもん)町が合併して以来、人口は年600人のペースで減り続け、18年には4万人を割り込んだ。追い打ちをかけたコロナ禍で観光入込客数は19年の371万人から21年には219万人に6割減。市税など最長2年間の徴収猶予の影響は「県内で最も深刻だが、今は(宿泊・飲食業者らの)背中を支える時期」と我慢が続く。
2月の初当選直後には、地元商工会議所や一次産業従事者らと「ふるさと納税応援プロジェクト」を立ち上げ本部長に就任。「知名度はあるのに本気で売り込んでいないからだ」として、特産のソラマメやオクラ、マンゴーのほか、花卉(かき)類を生かした返礼品の開発に挑む。
「寄付金増額は(20年度まで)7年連続の『実質単年度収支』赤字からの脱却ばかりか、特産品の売り上げ拡大につながる。財政、産業を助け、まちづくりを支える一石三鳥」との呼び掛けに、宿泊と船釣りを組み合わせた体験型返礼品をはじめ、地域業者も応え始めた。「ポテンシャルの高い食材や産品を磨き上げる」と前を向く。
「持続可能な財政」を公約に掲げた背景には、前市長時代に25億円を投じたサッカー場建設、野球場改修などで市債残高が300億円以上に膨張したこともある。「今年度から借りるお金は返すお金の9割以内。支出は収入を上回らせない」。「『入(い)るを量りて出ずるを制す』。こんな簡単なルールを守れないようでは未来世代にバトンを渡せない」と危機感を募らせた。
組織再編では、144に上る公共施設に目を光らせる「経営改善推進室」のほか、年間最大4000万円と見積もる新設施設維持費のために合宿や大会誘致・誘客を目指す「スポーツ振興課」でソフト面のてこ入れを図ることにした。
さらに、高齢者らを巻き込んだデジタル化の推進では、動画投稿サイト「ユーチューブ」専用チャンネル「デジサポ指宿」を通じ、市職員がスマートフォンの使い方などの動画を100本以上投稿。ワクチン接種証明アプリなどのオンラインサービスも紹介し、「誰もがデジタルの恩恵を受けられる環境づくり」を急ぐ。「指宿市は九州でも指折りの人を呼べるまちに生まれ変わる」。こう強調する。
〔横顔〕鹿児島県議4期、09~12年に衆院議員を1期務めた。一男二女は独立し妻(61)と暮らす。好きな言葉は最澄の「一隅を照らす」。
〔市の自慢〕「天然砂むし温泉」は、一風変わった「和風サウナ」として海外でも人気。薩摩富士と称される日本百名山の一つ、開聞岳(標高924メートル)のふもとで、環境省「平成の名水百選」認定の京田湧水を使う唐船峡は回転式そうめん流し発祥の地。
(了)
(2022年9月28日iJAMP配信)