インタビュー 【トップインタビュー】初の人口減踏まえ、子育て支援に注力=山中竹春・横浜市長 2022/10/03 08:30

昨夏の市長選で現職らを破り初当選した山中竹春横浜市長(やまなか・たけはる=50)が、8月末で就任1年となった。同時期にまとめた2022~25年度の中期計画素案では、小児医療費の無償化や全員利用の中学校給食などの事業を盛り込み、子育て世代の支援を前面に出した。
人口377万人と全国最大の基礎自治体だが、21年の人口は前年比4257人減と戦後初のマイナスに。生産年齢人口の転出入は市税収に影響を及ぼすため、子育て世代を直接支援して経済負担を軽減する施策は、持続可能な市政運営に必須と考える。
このためゼロ歳~中学3年が対象の市の小児医療費助成制度について、所得制限と保護者の一部負担金を2023年度中に撤廃する。「『他の市町村から横浜に引っ越した途端に小児医療費の助成がなくなった』『所得が少し上がり助成がなくなった』という切実な市民の声に応えたい」
中学校の昼食は「冷たい」などと不評だった旧「ハマ弁」を21年度にリニューアルし、契約業者が調理してご飯と汁物は温かいまま各校へ配送する「デリバリー方式」を実施。家庭からの弁当持参との選択制としている。市は26年度からデリバリー方式による全員利用の給食を始める方針だが、今でも生徒や保護者からおかずの温かさや量への注文はあり喫食率は3割程度。26年度の全面実施に向け、「市民の声を改善の方向性に反映したい」と話す。
高齢者に住みやすいまちづくりも目指す。外出支援や健康増進につながる地域の総合的移動サービスの構築はその一つ。バス停や駅が遠い地域で、ワゴン車などによる交通便の運行を拡充する。 所得に応じた負担金を払えば市営バスや地下鉄などに乗り放題となる敬老パスは10月から紙製からICカードに切り替えた。利用実績を把握しやすくなるため、データを基に制度を再設計する方針だ。75歳以上の無償化の要否も検討する。
財政運営では、減債基金の活用依存からの脱却を掲げる。「これまでと同じやり方を続けることも短期的には可能で、来年、再来年にどうにかなるという話ではない。だが、就任までの財政状況を踏まえると、見直す必要がある」。職員とともにEBPM(エビデンスに基づく政策立案)の視点で2年目の市政運営に取り組む。
〔横顔〕横浜市立大教授を経て、21年初当選。データ分析の手法を生かした政策、施策、事業の展開を目指す。市職員によると、最近よく出る言葉は「スピード感」。
〔市の自慢〕日本初のビール醸造所やアイスクリームの製造、鉄道開通(新橋―横浜)、近代テニスなど、横浜が発祥地であるものが多い。
(了)
(2022年10月3日iJAMP配信)