インタビュー 【トップインタビュー】半導体大手進出など「先を見ながら着実、現実的が大事」=後藤三雄・熊本県菊陽町長 2022/10/07 08:30

ソニーや富士フイルム、半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)など、大手企業が進出する熊本県菊陽町。4期16年にわたり町政を担ってきた後藤三雄町長(ごとう・みつお=76)は、10月13日に任期を終える。「地方行政は地味かもしれない」と話すが、「どういう社会が到来するか。先を見ながら、着実かつ現実的に実施するかが大事だ」と強調する。
1968年の町役場入りから、54年間行政に携わってきた。2006年の初当選を含め、計4回の選挙を経験。そのたび、新しい政策を実現する責任を感じたが、初当選から「人を大切にする町づくり」という信念は持ち続けた。
子育て支援や福祉を充実するため、待機児童の解消や学童施設の増築、高齢者の健康づくりのジムの開設などに取り組んできた。「経験上、財政状況は分かっていた」と、企画財政課長だった時の経験も生きたという。子ども医療費無償化の対象年齢を引き上げる際は、歳出の増加が懸念された。しかし、「町の財政については分かっている。試算をし、今の段階では大丈夫だ」と判断。2022年3月に、対象を中学3年生から高校3年生の18歳までに引き上げた。
ハード面では住宅地や道路の建設など、インフラ整備を継続してきた。熊本市に隣接するという利便性もあり、町の人口は、22年8月末時点で4万3641人。町長就任時から1万人以上増加した。
「決断までにはいろいろ考えた」と悩んだのが約21ヘクタールの工業団地の整備だ。隣接するソニーの工場拡張を念頭に整備したが、買収の確証はない。それでも「将来必要となる事業は、今手を出しておいた方がいい」と18年に着手した。「場合によっては、他の企業でもいい」と県と誘致の方向性を共有するなど、連携を強めながら企業進出を待った。21年6月にソニーから用地買収を持ち掛けられ、11月には、ソニーと関係を持つTSMCの進出が決定。従業員数は約1700人に上る見込みで、24年の工場稼働に向け、建設が進められている。
4月の異動時期には「希望部署に行けなくても、町や住民にとっては必要な仕事」と、職員に伝える。「新しい人と知り合い、何かあったときに相談し、情報をもらえるような人間関係をつくることが大事。それが財産になる」。
〔横顔〕任期満了後は、風景画を再開したいという。家庭菜園にも力を入れ、これからは大根などを栽培する予定だが「あんまり欲張ると大変なことになる」と話す。趣味はカラオケ。
〔町の自慢〕にぎわいのある大型ショッピングモール。熊本市中心部や熊本空港へのアクセスも良好。
(了)
(2022年10月7日iJAMP配信)