コラム 【公務員の段取り力11】見せよう、そして語ろう 2022/10/28 11:00

静岡県藤枝市人財育成センター長 山梨秀樹
▽仕事はやるもの、見せるもの
あなたはプロとして、自分の仕事を周囲にオープンにしていますか?
成果だけではなく途中経過も、仲間や上司、そして住民に随時報告し、あなたの仕事を「見せる」ことは重要です。「何か一生懸命やっているようだが、今、何に取り組んでいるのか分からない」「忙しそうだが、彼は今、何をしているのだろう? 」…。そんな疑問を上司、幹部、そして住民が抱くようでは、あなたは十分に評価されていないことになります。
それは、自身が取り組む行政の進捗(しんちょく)状況や変化を、周囲に明らかにしていないからです。黙々と作業をするだけでなく、進み具合を役所の内外に示す、つまり発信することが大事です。今していること、苦労している中身や進捗度合いなどを、随時、庁内にも地域にも伝えるのです。
仕事の成果や結果を出すまで知らせるべきでないと考えるのは、大きな間違いです。公務員の説明責任として、自分の動きを明確にするように働くべきなのです。
あなたの活動が周囲に理解され、その存在感が分かることが大切です。税を原資として働く我々は、役所の内外を問わず、自分の仕事を常に人々に知らせ、説明する義務があります。一定の成果や実績が出たらもちろんです。この社会的責務を果たすとともに、今、こんなことをバリバリ(または、コツコツ)やっていますという、公務の披露=仕事の段取り状況の表出(PR)を欠かさないことです。
その動きと見せ方で、人々は行政の最新の姿を実感を持って知ることになり、行政の透明化にもつながるのです。
▽「天知る、地知る」はダメ!
良い仕事をして、それを徹底的にPRする。より広く、多くの人々に知ってもらう。そこまで段取りをして、初めて「公務」です。個人経営などで、寡黙な職人肌の人なら「良い商品を作っていれば、黙っていてもいずれ売れるようになる」と言うかもしれません。
しかし、超高度情報化社会の現代に、それはもう通用しないでしょう。どんなに優れた仕事でも、世間に知られなければ、この世に存在しないのと同じです。ですから徹底してPRし、あなたの動きが「知られる段取り」を怠りなく進めることです。
精魂込めて練り上げ、あなたの思いが詰まった施策・事業も、その存在と有効性、意味と行政効果を真剣に社会に伝えなければ、誰も気付いてくれません。活用も評価もしてくれません。そればかりか、「最近、役所の仕事ぶりがよく分からない」「職員は一体何をやっているのか」「大して働いていないんじゃないか」とさえつぶやかれます。これは、懸命に業務を進めている職員にとって実に不本意であり、最悪の評価と言えます。
今どき「地道に続けていれば、住民がそのうち理解してくれる」「いずれ天知る、地知る」などと、山奥の仙人のようなことを言っている公務員は失格でしょう。施策や事業の住民へのアピール、PR、プロモーションは、あなたの公務そのものです。
施策・事業の中身とその価値を徹底して発信し、より多くの人に利用してもらう。人々に受け入れやすく、分かりやすい説明を繰り返し、常にアピールすることは、必須の行政活動です。それでこそ事業が住民に評価され、指摘も批判もしてもらえます。今日、伝える手段や媒体はより取り見取り。あらゆる広報手段を全力で使い、「わが仕事」を広く、多くの人々にさらけ出しましょう。
▽成果を一言で語れるか?
自分の仕事を最も的確に見せ、説明することができるのはあなた自身です。年度の終わりに振り返った時、自分としてどんな価値ある仕事をしたかを、一言で語れるでしょうか。これは公務員の責務としてはもちろん、あなた自身の自己実現と自信、プライドにも関わることです。新しいことができたか、そうでなくても、改善や改革をし、昨年より少しでも良くなったか。自分の「行政作品」を一つでも作れたかどうかです。
1年はあっという間に過ぎていきます。慌ただしい年度初めからいつの間にか1カ月がたち、5月の連休を過ぎたかと思えば、はや四半期。夏が来て半年が終わり、その後はさらにペースが早くなります。秋にはイベントなどの諸事業に追われ、次年度の方針と予算の立案で年末を迎えます。年が明ければ間もなく予算議会と人事異動の内示、そして年度末です。
その間に、誰もが分かるよう一言で説明ができ、達成感を感じる仕事ができたか。それとも、ただ周囲や時間に流されて働き、漫然と過ごしたか。違いは大きいと思います。
1年という期間は、意味のある成果や結果を出すには適当な長さではないでしょうか。取り組んでいたり、実現したりしたのであれば、小さなことでも堂々と語り、どんどん発信していきましょう。そして職場や住民の評価、指摘を受け、仕事の手応えを感じましょう。(了)
- ◇山梨秀樹(やまなし・ひでき)氏のプロフィル
- 1983年静岡県庁に入り、旧総理府(現内閣府)地方分権推進委員会事務局、静岡県総務部合併支援室、藤枝市行財政改革担当理事、同市副市長、静岡県理事(地方分権・大都市制度担当)などを経て、19年4月から藤枝市理事。同年6月に人財育成センター長に就任した。同県内を中心に、公務員の「言葉力」をテーマにした研修・講演の講師を務めている。