2022/令和4年
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コラム 【いま公務の現場では10】公務員と政治の関係 2022/11/09 11:00

人事院事務総局企画法制課長 植村隆生

人事院企画法制課長 植村隆生氏

 この連載も10回目を迎えましたので、取りあえず一区切りにしようと思います。今回は、公務員と政治の関係がテーマです。

 いわゆる政官関係については、古今、政治学者や行政学者、メディアによりさまざまな角度からの分析があり、多くの研究成果や記事、評論が出ています。その中には「なるほど」と感心する考察もあれば、首をひねるような主張もあります。また、近年は、公務員の働き方改革の観点から国会対応業務の合理化が政治課題になっています。今回は、霞が関で実際に働いている立場から、思うところを記したいと思います。

 なお、コラム中の感想や意見に係る部分は筆者個人の見解であり、筆者が所属する機関の見解を代表するものではありません。

◇官邸主導と公務員

 2001年の中央省庁改革で、内閣総理大臣の発議権の明確化や内閣官房の機能強化、内閣府の設置などが具体化し、14年に内閣人事局が設けられたことで、政治主導の確立を目指した内閣機能の強化は制度的に完成されました。

 第二次安倍晋三内閣や菅義偉内閣は、これらの制度をフルに活用し、閣僚や官僚に対して強い指導力を発揮しました。とりわけ、政権の掲げる重要政策をめぐり、総理大臣や官房長官の意向を受けた「官邸官僚」とも呼ばれる特別職(政治任用)の公務員が各府省を説得するなど、トップダウンが強力に進められました。現在の岸田文雄内閣に「話を聞く」イメージはありますが、政権の重要テーマについては官邸主導の要素が強いと言えます。

 官邸主導は当時の中央省庁改革の目的の一つであり、必然ですが、各府省で働く公務員にとって▽自分たちが下請けのようになりモチベーションが下がる▽幹部が官邸の意向を忖度(そんたく)するようになる――といったネガティブな要素があることも否定できません。

 若手職員のエンゲージメント(組織への信頼や愛着心)を高めるには、各府省の幹部職員・管理職員のマネジメント改善や、職員の主体的なキャリア形成支援など人事管理上の工夫が必須です。また、国家公務員制度改革基本法第11条(内閣人事局の設置)には「内閣官房長官は、政府全体を通ずる国家公務員の人事管理について、国民に説明する責任を負う」とあります。幹部公務員も政治任用職ではなく一般職の職員であり、その人事に関する合理的な理由が示されることは、心理的安全性を確保する上でも有効でしょう。

◇各府省の政治家と公務員

 政治主導を確立する目的で01年、各府省の大臣の下に副大臣・政務官が導入されました。民主党政権(09年~12年)での官僚不信に根差した極端な政治主導の時期を除けば、時々、個性の強さから公務員と対立したり、パワハラと評されたり、「対応マニュアル」が出回ったりする政治家はいるようですが、総じて政務と事務の間で適切な役割分担をしながら、政官関係をうまくマネジメントしている印象があります。

 なお、01年に政府委員制度が廃止され、公務員は政府参考人として招致された時しか国会で答弁できなくなりました。これについて故古川貞二郎元官房副長官がさまざまな場で「官僚は誇りを失い、士気が低下した」という趣旨の意見を述べていることに触れておきたいと思います。

◇国会対応と深夜残業

 各府省にとって、政策を予算や法律として円滑に成立させるには、与野党の国会議員との関係を良好に保つことも欠かせません。そのため、役所での地位が上になるほど、日々の仕事で議員との付き合いの占める割合が大きくなります。また、中堅・若手公務員は、国会会期中、委員会で質問に立つ議員に事前レクをするほか、委員会直前に質問通告を受けて大臣や局長の答弁を作成します。こうした「国会対応業務」は残業が深夜に及ぶ要因の一つであり、働き方改革の観点からも合理化が必要です。

 各府省は、議員からの質問通告の委員会2日前ルールの徹底、質問取りやレクの原則オンライン化、与野党の部会などのペーパーレス化の浸透などを要望しています。いずれもルールや方針があるのに必ずしも守られていません。コロナ禍で普及したオンラインレクを最近は対面に戻す議員も増えているようですが、原則オンラインになれば職員はテレワークでも対応できますし、ペーパーレス化が徹底されれば大量の資料のコピーや持ち込みの負担が軽減されます。

 国会議員の質問主意書への対応期限見直しを求める声も強いです。国会法第75条で「内閣は、質問主意書を受け取った日から七日以内に答弁をしなければならない」とされ、期限の延長は例外的にしか認められていません。答弁には閣議決定が必要であり、職員の負担も重く、深夜に及ぶ残業の原因となっています。

◇持続可能へ理解と協力を

 国会対応業務の改善については、昨年来、川本裕子人事院総裁が衆参両院議長はじめ国会議員に働き掛けるなど、国会の理解と協力をお願いしています。各府省からは、質問通告の早期化、オンラインによる対応が進み超勤縮減にもつながったとの声が聞かれます。同時に、より一層の推進を求める声があります。内閣人事局も速やかに国会答弁作成業務の実態を把握すべく検討中と聞いています。わが国では、委員会の日程セットなど国会の議事運営に政府が関与できないため、政府は国会や政党にお願いするしかありません。公務組織の将来的な持続可能性のため、少しずつでも改善の方向で進んでほしいと願います。(了)

◇植村隆生(うえむら・たかお)氏のプロフィル
1972年東京都生まれ。東京大学法学部卒業。人事院に入り、給与局参事官、同生涯設計課長、同給与第三課長、人材局企画課長、事務総局企画法制課長を歴任。総務省、産経新聞社、米国ワシントンDCでの勤務経験もある。

【いま公務の現場では】

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