2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】小さくともきらりと光るまちを=中村中・島根県江津市長 2022/10/19 08:30

中村中・島根県江津市長

 島根県内8市のうち最も人口が少なく、「東京から一番遠いまち」と取り上げられたこともある同県江津市。中村中市長(なかむら・あたる=43)は、「小さくとも一層きらりと光るまち」を掲げ、今年7月に就任した。最重要課題として人口減少対策を挙げ、「全ての政策が人口減少対策につながるようにしたい」と意気込む。

 市によると、現在の人口は約2万2000人だが、2040年には1万7000人程度まで落ち込むと推計される。これに対し、「なんとか市としてあらがう」と熱が入る。就任後、早速取り組んだのは「15歳まで」としている医療費助成の対象拡充だ。「子どもに対して優しいまちというのは(対策に)不可欠だ」と訴え、来年4月から「18歳まで」への引き上げを実現させた。

 市職員との関係性も重視。意見交換会を順次実施し、「中堅職員は特に現場の声を聞いているし情報が早い。職員は真面目で一生懸命な印象で、安心した」と笑顔を見せる。「市長と職員という立場を感じさせないのがベスト」と語り、職務以外の話も弾ませることで、信頼関係を築き上げていきたい考えだ。「対話を重ねれば重ねるほど意思疎通もできるようになる」と強調し、意見交換会の継続的な実施に前向きだ。

 全国的な観光需要の回復に期待が寄せられているが、「1市だけで旅行客を呼び込むのは限界がある」と話す。近隣自治体と協調して「いろんな連携の仕方があると良い。相乗効果で増やしていく」と続ける。石見神楽や明治維新といった地域が持つ文化、歴史にまつわるストーリーを基に広域の観光ルートを作りながら「他市と連携できないか」と青写真を描く。

 来年度以降、山陰道の各区間が順次開通することにも触れ、アクセスの良さが観光の磨き上げに関わるという。隣接していない出雲市などとさらなる関係性の構築を模索する。一方、情報発信の強化が課題で、市を「知ってもらわないとなかなか来てくれない」と話す。

 18年4月に広島県三次市を結ぶJR三江線が廃線となった経験を持つ同市。市長として「住民のニーズに合わせてどういう公共交通の在り方が良いのか考えないといけない」と明かす。自身も幼い頃に三江線を利用しており、「江の川の景色を見たり、工場に近づくとにおいが変わったりという思い出がある」と懐かしむ。県内でも山陰線の一部区間と木次線が「輸送密度1000人未満」に該当するため、国への要望活動などを「引き続き各自治体と力を合わせてやっていきたい」と気を引き締める。

 〔横顔〕江津市出身、東北福祉大卒。体を動かすのが好きで、市職員で構成する野球部に入った。市長就任年度にちなみ背番号は「22」。

 〔市の自慢〕1370年以上続く有福温泉がある。周辺には昔からの街並みが残り、豊かな自然も奥深さを助長させる。

(了)

(2022年10月19日iJAMP配信)

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