インタビュー 【トップインタビュー】基幹産業守り人口減に対応=田中正治・北海道占冠村長 2022/10/20 08:30

北海道のほぼ中央部に位置し、星野リゾートトマムでも知られる占冠村。昨年2期目に入った田中正治村長(たなか・まさはる=66)は「1期目で子育て支援策にめどが付いた。次は林業を復活させ、人口減少に対応したい」と語り、基幹産業の立て直しによる持続可能な地域づくりを目指す。一方、宿泊税の導入にも意欲を見せ、観光振興に力を入れる考えだ。
人口約1270人の村。国立社会保障・人口問題研究所の推計では将来、約400人になるとの試算もある。そこで1期目、「子育てしにくい場所には住んでもらえない」と保育環境を整備。以前は3~5歳児の3年保育だったが、村立保育所2カ所を新築・改修。1歳児から受け入れる。
ただ、保育士は「なかなか集まらない」と確保に苦労した。逆転の発想で保育士を目指す人材に着目。働きながら保育士資格を取得してもらおうと、地域おこし協力隊員として、保育の支援を担う人材を全国公募。関東圏からも採用した。次の目標は0歳児保育の実現。「子どもがいると地域の雰囲気が良くなる」と話し、保育環境の充実で女性の社会進出も促す。
2期目の柱は林業の再生だ。輸入木材価格が高騰する中、国産材に商機が到来。村内の9割以上が森林という地の利を生かし、「原材料は地元にたくさんある」と攻め込む。建設会社とタッグを組み、村内に製材工場の設立を模索。需要に応じた製材供給を武器に林業復活の歩みにつなげる。
観光資源も村の大きな財産。村独自の宿泊税創設で財源確保に乗り出す構えだ。2023年度に制度設計を行い、24年度の導入を検討。「道の駅の改修、リゾート施設内の道路補修、多言語の観光パンフレット作成などに充てたい」と語り、観光振興策に役立てる計画だ。基幹産業のてこ入れで人口減に一定の歯止めをかけ、「1000人を切らない人口規模を維持する」と力を込める。
〔横顔〕1974年に村役場入り。会計管理者、総務課長などを経て、17年の村長選で初当選。若い頃は役場の野球チームに所属。新型コロナウイルスの収束後、孫たちと「温泉旅行ができれば」。
〔村の自慢〕「自然がいっぱい。通勤5分が魅力」と語る。新千歳空港から車で約1時間とアクセスが良く、「雲海テラス」で人気の星野リゾートがある。
(了)
(2022年10月20日iJAMP配信)