インタビュー 【トップインタビュー】町のことを考える人増やす=中山哲志・福岡県大刀洗町長 2022/11/04 08:30

住民が「仕分け人」として「事業仕分け」を行い、住民の意見を町政に取り入れてきた福岡県大刀洗町。数年前からは事業仕分けをより発展させた「住民協議会」を実施している。県職員の経験を持つ中山哲志町長(なかやま・てつし=55)は「町のことを自分ごととして考え、行動してくれる人を増やせるような町づくり」を目標に掲げる。
町が住民の意見を取り込もうとする際、「同じメンツが集まるということがありがち」という。住民協議会では、性別や年齢に関係なく、無作為に選ばれた町民が課題について意見を出し合う。「普通だと拾えない意見が拾えて、今まで気付かなかった意見や視点が出てくるので、すごくよい取り組みだと思う」と強調。昨年は「ごみを減らすために私たちにできること」というテーマについて議論を行った。
今一番の課題は防災対策。大刀洗町はもともと災害が少ない町だったが、昨年までの過去5年間は毎年水害に見舞われている。「最近は強さも頻度も常識では考えられないような雨の降り方をする」と説明。防災メールを携帯電話に送信するほか、現在、急いで防災行政無線の工事を行っている。
治水については、「今までの河川整備のやり方ではどうしても対応が難しい」という。川の流域全体で対策を図ろうとする動きがあるが、上流域、中流域、下流域は複数の自治体にまたがっており、「遊水池を造るといった議論になれば、利害関係が絡む」と語る。
自家用車での移動が難しい単身高齢者や高齢者のみの世帯が増える中、公共交通機関の維持も町の課題だ。しかし、役場の最寄り駅も有する西鉄甘木線は利用者が減りつつある。利用者を増やそうと、駅舎をペイントするといった取り組みを実施するが、大手私鉄には国や県からの補助の仕組みがないといい「(西鉄から)『経営判断で(線を)なくします』と言われないようにするための大きなスキームがない」のが現状だという。
交通弱者を減らそうと、定額で乗れるタクシー「ひばり号」を今年7月から展開している。町内であればどこでも500円で乗ることができる。近隣のタクシー会社に委託しており、料金の差額を町が支払う仕組みだ。以前、町内で無料巡回バスの試行運転をしていたが、ドアツードアの移動を意識し、ひばり号の運行を開始した。「巡回バスより(利用者が)多いと思う」と話した。
〔横顔〕趣味は読書で、歴史物が好き。最近は公務の隙間時間などに手つかずの土地を「開墾」し、野菜などを作っている。夏は草刈りをしていたといい、作業後にビールを飲むのが楽しみだった。
〔町の自慢〕真面目な町民が多いこと。「ベースが農村地帯で、田んぼを含めて農地は共同作業があるので、昔ながらの近所付き合いが残っている地域」(中山町長)という。
(了)
(2022年11月4日iJAMP配信)