2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】コロナ禍をチャンスに=福井正明・滋賀県高島市長 2022/11/09 08:30

福井正明・滋賀県高島市長

 「見方を変えると、新型コロナウイルス禍は一つのチャンスだ」と語るのは、滋賀県高島市の福井正明市長(70)。テレワークの広がりなどを受けた都市から地方への新たな人の動きをとらえ、市の活性化につなげたい考えだ。

 県北西部に位置する同市は大阪や京都からJR湖西線で1時間ほどの通勤圏だが、人口は1945年の約5万6000人をピークに、現在は4万6000人まで減少。国立社会保障・人口問題研究所の推計では60年に2万4000人まで減少すると見込まれているという。

 そこで市は今年2月、「高島リビング・シフト構想」を策定。テレワークやワーケーションなど、新たな働き方や暮らし方の受け皿となることで関係人口や移住者の増加を目指す。JR西と連携し、希望者に市が物件を紹介する「おためし暮らし」など12のプロジェクトに取り組み、「人口減のペースをなだらかにしたい」考えだ。

 市のアピールポイントとして「都市部には見られない、あるがままの自然と景観」を挙げる。「高島の琵琶湖岸の風情は、東部や南部と全く異なる。琵琶湖と共に人々の暮らしがあり、その中でさまざまな文化が連綿とつながれてきた」と強調。冬でも多くのキャンプ客が訪れているとして、「人々が非日常の空間を求めている」と魅力を語る。

 子育て支援の充実にも力を入れる。中学卒業までの医療費と給食費に加え、保育料も無償化を実現。「子育て支援に関しては、県内で最も充実していると思っている」と胸を張る。

 活性化に取り組む中、コロナ禍を受けた湖西線の減便は「地元には厳しい見直し」だった。24年春の北陸新幹線の敦賀延伸を控え、今後は北陸から関西方面をつなぐ役割として湖西線の本数増に期待を寄せている。

 一方、県が検討している交通税については「(JRなどの)経営支援ということであれば違うと思う。(公共交通の支援は)国全体で考えていく問題ではないか」と語る。

 〔横顔〕県職員出身。病院事業庁長を経て、13年に市長に初当選し、現在3期目。趣味は「体を動かすこと」で、地元の60歳以上向け野球チームでは4番でピッチャーを務めたという。座右の銘は「誠意一路」。

 〔市の自慢〕観光スポットになっている全長2.4キロのメタセコイア並木は、台風被害に遭った地元農家が防風林として植栽したもの。「自然や景観に加え、人々の暮らしから紡がれた生活文化が残されているのが高島の強みだ」と力を込める。

(了)

(2022年11月9日iJAMP配信)

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