2022/令和4年
1127日 (

コラム 【地方議員の視点10】華やかで意義のある場 2022/11/22 11:00

甲府市議会議員 神山玄太氏

甲府市議会議員 神山玄太

 議会と言えば、議員が演台で発言するイメージを持つ方も多いと思います。地方議会はそれぞれでルールが異なりますが、議員はさまざまな機会に演台で発言しており、甲府市議会では、議員提出議案の説明や議案に対する討論、委員長報告などの際に登壇します。そして、議員が一番多く演台に立つのは、市政一般質問の時です。

 市政一般質問とは、本会議で市政課題について市長にただし、政策提言をする発言のことです。全国町村議会議長会が編集した「議員必携」は「政策に取り組み、政策に生きるべき議員にとって、一般質問は、最もはなやかで意義のある発言の場」と説明しています。それだけ議員活動にとって重要な場であると言えます。

◇質問取り

 甲府市議会は会議規則で「議員は、市の一般事務について、議長の許可を得て質問することができる」と規定しており、これを根拠に一般質問をします。定例会の2日目から4日目にかけて3日間の日程で、各会派に発言時間が割り当てられており、構成人数によって配分される時間は異なります。各会派は、所属議員の誰が質問するかを決め、持ち時間を割り振ります。だいたい1回の定例会で12人程度が一般質問に挑んでいます。

 一般質問するには「議長にその要旨を文書で通告しなければならない」(甲府市議会会議規則)とされており、定例会前に最初に開かれる議会運営委員会(通常は定例会開会日の3日前)までに議長に通告します。

 公式の手続きは、発言通告書の提出だけですが、その後、非公式な別の段取りが始まります。「質問取り」と言われる執行部による議員の質問内容の聴取です。発言通告書は要旨を記載するだけなので、執行部側がきちんと答弁し、議論がより深まるようにするため、具体的な質問内容を事前に確認する必要があると考えているからです。

 質問取りのやり方はそれぞれの議会によって伝統的に構築されてきています。ある議会では答弁に関係しそうな担当職員が一堂に会し、議員を前にまるで記者会見のように質問内容を確認するようです。別の議会では「勉強会」と称し、議員を担当する執行部の職員が、まるで家庭教師がそばに座るようにして、確認作業をしているそうです。甲府市議会では「〇〇までに、質問原稿をください」と担当者から締め切りが示されるので、その日までに提出します。これで質問取り最初の作業は終わりです。

 質問原稿の提出を受け、執行部の担当者が答弁すべき箇所を関係する課に割り振り、課ごとに答弁原稿を作成します。私は最近、子細な質問原稿は作っておらず、要旨という形で参考になる資料を渡しています。

 課ごとの答弁原稿は庁内の意思決定過程を経て、市の答弁となっていきます。以前、会派の仲間3人で、都市計画を共通テーマに手分けして一般質問したことがあります。一問一答形式にしたため、3人の質問数が合計で30を超えてしまいました。ほぼ全てを一つの課が担当したため、その課から「本当に大変だった」と言われたことがあります。ただ、質問と答弁のやり取りで、とても内容を深めることはできました。

 答弁原稿作成中に質問内容に疑問点があると質問取り担当者を経由して確認のための問い合わせがあります。きちんとした答弁をしてもらうためにも、こちらの意図が伝わるように対応しています。

 発言通告書を提出してから上記のようなやり取りを経て、質問当日を迎えます。そのため質問者も答弁者も、用意した原稿を読むだけの場という雰囲気で見られてしまい「一般質問は学芸会だ」とやゆされる面があると思います。

◇初の一般質問で違和感

 私が初当選して初めて一般質問に登壇したとき、右も左も分からず、執行部から言われた通りに質問原稿を出しました。すると、当日の本会議場にいる執行部の職員全員が私の質問原稿のコピーを持っていました。質問に合わせて同じタイミングでページをめくり、しかも原稿ばかりに目を落として聞いています。発言している私がどんな表情で、どんな思いでいるのか、こちらを全く見ないことに強い違和感を持ったのを覚えています。

 質問と答弁がかみ合うことできちんとしたやり取りになりますから、事前の質問内容の確認は大切でしょう。ただ、整えすぎるのも臨場感をなくしてしまい、政策やまちづくりに対する議員と市長の気持ちや思いのぶつけ合いにならないと実感しました。今では細かい質問原稿ではなく、要旨だけを提出するようにして、できるだけライブ感のある議論になるように工夫しています。

 一般質問は、最も華やかで意義のある発言の場とされ、手間と時間をかけて発言の当日を迎えますが、実はこの一般質問は地方自治法に根拠規定はありません。各議会で定める会議規則を根拠とするのみです。それが議員にとっても、執行部にとっても、本会議での重要な場だと位置付けられており、とても興味深く感じます。(了)

◇神山玄太(かみやま・げんた)氏のプロフィル
1982年甲府市生まれ。金沢大学法学部を卒業し、早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。日本インターネット新聞社で記者として勤務後、甲府に戻る。2010年、国会議員政策担当秘書資格試験に合格。11年に甲府市議に初当選。12年に早稲田大学パブリックサービス研究所招聘研究員に就任。第6回マニフェスト大賞でグッド・マニフェスト優秀賞を受ける。15年の甲府市長選挙では次点で落選。甲府市議に2期目の当選後、17年9月から1年間「関東若手市議会議員の会」会長。19年4月から3期目の甲府市議。山梨英和大学で非常勤講師を務めた経験も。「ワイン県」山梨で活動する議員として21年にワインエキスパート資格も取得。

【地方議員の視点】

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