インタビュー 【トップインタビュー】「星の町」をビジネスに=大舌勲・岡山県井原市長 2022/11/25 08:30

岡山県井原市の美星町地区は昨年11月、世界の天文学者らでつくる「国際ダークスカイ協会(IDA)」から、街灯など人工的な照明の影響を受けない、暗く美しい夜空の保護をたたえる「星空保護区」に認定された。今年9月の市長選で再選を果たした大舌勲市長(おおした・いさお=63)は「星の町をアピールしたビジネスに力を入れたい。癒やしを求めている多くの人に響くだろう」と意気込む。
旅行会社などのツアーをきっかけに、再度観光客に訪れてもらうことを目指す。その上で「行政だけではビジネスにつながらない」と語る。2020年10月に立ち上げた行政や民間企業、大学などの団体が集う組織「星の郷まちづくりコンソーシアム」を中心に、地域に定着するビジネスを進めていく考えだ。観光地域づくり法人(DMO)や地域商社の立ち上げについても検討している。
また、美星町地区を起点とした市全体の観光振興にも力を入れており、「ビジネスが広がれば地域に還元できる」。「夜」に楽しむことができる星はもちろん、「昼」に楽しめる「おもてなし」のコンテンツも強化したい考えだ。例えば「(地場産品の)デニムを見に来る人も、特産品のブドウを買い求めに来るお客さんもいる」と言及。星とその他の観光との相乗効果を図りたい考えだ。
ただ、住民の間では、観光客の増加により、ポイ捨てなどのごみが増えるといった問題も懸念されている。星には多くの観光客を引き付ける「価値がある」と地域の人に理解してもらうことも必要だ。地元理解に向けた取り組みの一環として、地元の観光協会などでは、地域住民などが対象の観光ガイド認定制度を導入。未就学児から大人までが受験できる、星座や美星町地区の歴史・文化に関する知識を問う「星の検定」も創設した。
「大人の考えはすぐに変わらないが、将来は子どもが大人になっていく」とし、今後は、次世代を担う小・中学生向けに「価値」を伝えていきたい考え。子どもたちが将来、進学や就職で市外に出ても「友達を連れて帰ってくる『価値』がある地域だということを引き継ぐことが大事。間違いなく(地域の認識は)変わっていく」と力を込める。
人口減少対策の3本柱の一つとする子育て支援では、高校生までの医療無償化、保育無償化などに取り組んでいる。「家族での移住を歓迎している」とし、来年度以降、新たに市内企業に勤める市外在住者の移住に対し、住宅補助などの支援をしていきたい考えだ。
〔横顔〕趣味はドライブ。旧国道など地域の文化や昔の街並みに触れられるのが好き。休日などには芝刈りでストレスを解消する。
〔市の自慢〕デニムをはじめとするものづくり産業。岡山県倉敷市や広島県福山市など、近隣都市へのアクセスの良さも魅力だ。
(了)
(2022年11月25日iJAMP配信)